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技術資料

低価格電子線照射装置 コンパクトEBラボ機™の開発

株式会社アイ・エレクトロンビーム 開発製造部 EB装置開発課 伊藤 昌好,井出 崇

キーワード

電子線照射装置,コンパクトEBラボ機™,低価格,小型,低電圧,2極方式

1.はじめに

電子線は,印刷・接着用樹脂を硬化させるキュアリング処理や,被照射物表面の殺菌・滅菌処理が可能であることが知られている。これらの処理を行う場合は,実験機を購入するか当社施設においてテストを行う方法が選択されていた。

しかしながら,従来の実験機では導入にあたり非常にコストが高く,お客様から投資しづらいという意見が多く寄せられていた。また,当社施設で実施するテストでも,特に遠方のお客様の場合は頻繁にテストが行えず,評価に時間がかかるため,問題点も多くあった。

そこで,電子線照射装置を身近に感じられ,導入するにあたり障害となっている価格を抑えることで,多くの顧客に電子線照射装置を使用していただこうというコンセプトからこの商品開発が始まった。

2.商品概要

図1に本電子線照射装置(コンパクトEBラボ機)の外観を,図2に装置外形寸法を,表1に本装置と従来形の標準EB実験機との仕様比較を示す。

本装置は従来形の装置と比較して,容積比で約1/5に,質量比で約1/8となっており,大幅な低価格化と小型化を実現している。

図1 装置外観

図2 装置外形寸法

表1 装置仕様比較
装置名 コンパクトEBラボ機 標準EB実験機
装置外観
形式 EC90/10/50L EC250/15/180L
加速電圧範囲(kV) 50~90 80~250
ビーム電流範囲(mA) 0.10~2.00 1.0~10.0
有効照射幅(mm) 100 150
搬送速度(m/min) 1~15 5~60
照射線量(kGy・m/min) 500以上 1800以上
被照射物サイズ(mm) W125×D100×H10 W200×D150×H23
外形寸法(mm) W845×D915×H1600 W1750×D2000×H2000
質量(kg) 450 3500

3.特長・機能

3.1 低価格化・小型化の手法

3.1.1 2極方式の採用

従来,電子線を発生させる高電圧電源は特注対応の3極方式を採用していたが,これをX線管用の2極方式にすることで,小型化および大幅なコストダウンを実現することができた。

3.1.2 軽量化

標準EB実験機が加速電圧80~250kVであるのに対し,本装置においては50~90kVとすることで,装置をコンパクトにまとめて軽量化を図った。これに伴い,電子線照射することで発生する制動X線の遮蔽にかかる鉛の重量やコストを抑えることができた。

3.2 容易な搬入作業

前述のコンパクト化や軽量化を図ることでキャスター移動ができるようになり,制限の少ない搬入作業を行うことができる。また,荷物用エレベーターがある施設においては,高所階でも特別な重機を必要としない搬入作業が行えるようになった。

3.3 環境負荷削減効果

本電子線照射装置の最大の特徴ともいえるのは,従来の電子線照射装置では高電圧電源と電子線発生部との間の接続に使用していた絶縁オイルや絶縁ガスを必要としないところである。特に,絶縁ガスは六フッ化硫黄(SF₆)という温室効果の高い物質であるため,絶縁ガス未使用の本装置は,環境負荷の低減にも貢献している。

また,電子線照射装置の低価格化と小型・軽量化を実現したことで,材料開発やプロセス開発に必要な電子線を用いた実験の環境整備がより実現しやすくなると考える。

従来のUVキュアリングで必須だった光重合開始剤を使用しない電子線キュアリングシステムの開発や,表面滅菌等で使用されていた薬剤を使用しない電子線滅菌方法の開発がよりいっそう進展することが望まれる。

  • ※六フッ化硫黄(SF₆)
    常温常圧下では化学的に安定度が高く,無毒で不燃性の気体であり,絶縁性能も高いため,電気,電子機器分野で広く使用されている化学物質である。
    温室効果は二酸化炭素(CO₂)の約24000倍で,大気中での寿命は約3200年と長いため,温室効果ガスの中でも環境負荷が非常に高い。そのため,京都議定書(1997年)では地球温暖化防止排出抑制対象ガスの1つに指定されており,需要量が増加している一方で,さらなる削減が急務となっている。

4.おわりに

本装置を開発することで電子線照射装置をもっと身近に感じてもらい,電子線を活用した新たなプロセスが生まれてくることが電子線照射ビジネス全体の拡大にもつながっていくことと考えている。

また,従来方式の電子線照射装置のコスト削減や新しい方式での電子線照射装置のラインアップ拡充に向け開発を進めていく。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第35号掲載記事に基づいて作成しました。
(2016年11月1日入稿)

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