技術資料

屋外照明と建築物からの光害

技術開発室 技術部 技術開発グループ

キーワード

光害,漏れ光,地球環境,省エネルギー,写真測光

3.建築物から漏れる光の実態

漏れ光は屋外照明によるものばかりではない。建築物などもその一つと考えられる。ここではオフィスビルをモデルとし,窓から漏れる光の量を推測すると共に,屋外照明から漏れる光と比較した知見を報告する。

3.1 オフィスビルから漏れる光の推測

筆者と大場5)らは,2002年10月にビルからの漏れ光についての調査を,東京都内のH公園にて行った。H公園は周囲を高層ビルに囲まれている公園である。公園における地表水平面照度は図2に示すように,ビルからの漏れ光直接分,天空分(ビル漏れ光等の反射分),街路灯直接分の3成分からなる。よってビル窓面,天空輝度,地表水平面照度の実測とシミュレーション結果を比較することにより,ビルからの漏れ光と天空に漏れる光の量を推測できる。対象としたビルは表4に示す3棟で,ビルの位置と輝度・照度測定ポイントは図3である。また,表5に測定項目を示す。

図2 照度成分

表4 ビルのデータ

ビルA ビルB ビルC
階数(事務所階) 29(27) 31(29) 21(10)
事務所総床面積(m²) 40,000 90,000 35,000
全表面積(m²) 21,947 17,515 255,334
全窓面積(m²) 4,428 9,164 -
蛍光灯数/1F 2灯用×288 2灯用×408 2灯用×173
窓面積率 0.202 0.523 -
窓から放出される光 / 総ランプ光束 0.053 0.046 0.021
窓から上空に放出される光 / 総ランプ光束 0.027 0.023 0.011

図3 測定ポイント

表5 測定項目
項目 測定点 時刻
水平面照度分布 ビルA,B,Cの各9点 18:30
照度時間変動 15ポイント(図3) 18:30
窓面輝度 a,b(図3)  
写真測光 水平面 a,b(図3) 18:30
鉛直面 a,b(図3) 19:15
写真測光ポイントでの照度 水平面 a,b(図3) 20:00
鉛直面 a,b(図3) 20:30
天空輝度 上空3点  
(1)測定結果

18時30分時点での水平面照度の実測値はa点で3.0ℓx程度だった。これは街路灯,ビル窓,天空からの照度を合計した値である。次に,写真測光による各成分(街路灯,ビル窓,天空)照度の時間変動を図4に示す。

図4 H公園内の水平面照度

(2)シミュレーションの妥当性

シミュレーションによるビルからの漏れ光照度と,写真測光によるビルからの漏れ光照度が一致するかの検討を行った。その結果を図5に示す。シミュレーションと実測値は概ね一致し,窓から外へ漏れる光が推測できていると考えられる。

図5 漏れ光照度の相関

(3)ビルから漏れる電力比率の推定

上記の結果を基に,ビル内で使用されている全照明電力のうち,窓外及び天空に漏れている電力の比率を求めた。その結果を表4に示す。例えばビルAでは,ビル内の全照明電力のうち,5.3%を窓外へ,2.7%を天空に放出していると推測できる。

3.2 オフィスビルと屋外照明との比較

筆者ら6)はオフィスビルからの漏れ光を推測した結果をもとに,東京都心3区(中央区,千代田区,港区)をモデルとして,同地域でのビルの窓から上空に放出される光(上方光束)の総量を推定し,照明学会が報告した「屋外照明などの国内実態に関する調査」との比較検討を行った。計算条件を表6に示す。またモデルとしたビルは表4のビルAで,上方光束は2.7%とした。

(1)結果

オフィスビルから漏れる光の量は,表6に示すように土地面積当たりで34.8ℓm/m²,土地面積当たりの上方光束で17.4ℓm/m²となった。これは屋外照明の実態結果(図1)のN商業地区とほぼ同レベルである。ここでいう屋外照明は,ハイウェイ灯,防犯灯,ポール灯,アプローチ灯,HID投光器,投光電球,ブラケット灯を合計したものであり,これと同等の光が,都心3区のビルの窓から天空に漏れていることになる。またモデルとしたビルAの窓面積率(全窓面積/全表面積)は0.2として計算したが,一般的なオフィスビルではその値が0.3~0.4程度だと言われている。よって,実際のオフィスビルからは,もっと多くの光が漏れている可能性があると推測できる。

表6 計算結果
項目 数値 計算式 単位 備考
A 都心3区延べ床面積 25,000,000
(m²) オフィス5000m²以上
参考文献7)
B 同上 土地面積 42,130,000   (m²) 参考文献8)
C 照明電力密度 17.7
(W/m²) 参考文献9)
D オフィス照明電力 442.5 A×C (MW)
E FL40×2の電力 96   (W)
F FL40×2の数量 4,609,375 D/E

G 総光束 27,656,250,000 F×6000 (ℓm)
H 平均照度 415 G/A (ℓx) (U=0.5, M=0.75)
I 漏れ光束(5.3%) 1,465,781,250 G×0.053 (ℓm)
J 同上 損失電力 23.5 D×0.053 (MW)
K 床面積当たりの漏れ光 58.6 I/A (ℓm/m²)
L 床面積当たりの損失電力 0.94 J/A (W/m²)
M 同上 上方光束 29.3 K/2 (ℓm/m²)
N 土地面積当たりの漏れ光 34.8 I/B (ℓm/m²)
O 土地面積当たりの損失電力 0.56 J/B (W/m²)
P 同上 上方光束 17.4 N×0.5 (ℓm/m²)

4.おわりに

本稿では,エネルギー問題という観点から,屋外照明からの漏れ光の実態,光害対策による省エネルギー効果,建築物からの漏れ光の実態を紹介した。光害対策によって,大幅な省エネルギー効果はもちろんのこと,地球環境にとって非常に有益であることがわかる。しかし,街中を歩いてみると,いまだに上方光束を十分に制限していない照明器具が多く設置され,ライトアップされているビルも多いのが現状である。これは光害対策の有効性が国,自治体,ユーザー,設計者,施主などに十分に浸透していないのが原因の一つではないだろうか。

これらの問題点を解決し,人と地球にやさしい光環境を創造するためにも,本稿がその一助となれば幸いである。

参考文献

  1. 大場・他,「オフィスビルからの光害に関する研究~その1 ビルからの漏れ光の実態」照学全大講演予稿集,p.83 (2003).
  2. 魚住・他,「オフィスビルからの光害に関する研究~その2 照明学会・屋外照明などの国内実態に関する調査との関係」照学全大講演予稿集,p.85 (2003).
  3. (財)日本不動産研究所,「全国賃貸統計」2002年12月.
  4. 国土交通省国土地理院,「全国都道府県市区町村別面積」2000年10月.
  5. (社)照明学会,「オフィス照明の実態・研究委員会報告書」2002年3月,p.26.

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第9号掲載記事に基づいて作成しました。
(2003年10月28日入稿)


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