ライティング講座(照明講座)
照明計画資料
障害光の低減 - 光害
光害とは、「良好な光環境の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、又はそれらによる悪影響のことである」と定義されています。
良好な光環境を形成するためには、
- 地域の社会的状況や生態系・夜空を含む自然環境特性を踏まえ、
- 適切な照明により社会の安全性・効率性・快適性や良好な景観を確保しながら、
- 省エネルギーの実現や自然環境への影響を最小化するよう
配慮することが必要です。
国際照明委員会(CIE)では、照明光による環境への障害を許容できるレベルに抑制するために、関連する照明の特性値の許容限界を示しています。このレポート(CIE 150)は、2006年と2017年に改訂され国際的にも取組が進んでいますが、そのまま日本で運用するには課題があります。このため、ここでは環境省が2021年(令和3年)にまとめた「光害対策ガイドライン」を基に説明します。
概要を表10.1から表10.2に示します。
区域 | 例 |
---|---|
E1 | 自然公園や里地等で、屋外照明設備等の設置密度が低く、本質的に暗く保つべき地域 |
E2 | 村落部や郊外の住宅地等で、道路照明灯や防犯灯等が主として配置されている程度であり、周辺の明るさが低い地域 |
E3 | 都市部住宅地等で、道路照明灯・街路灯や屋外広告物等がある程度設置されており、周囲の明るさが中程度の地域 |
E4 | 大都市中心部、繁華街等で、屋外照明や屋外広告物の設置密度が高く、周囲の明るさが高い地域 |
(参考文献 環境省:光害対策ガイドライン 令和3年3月改訂版(2021))
照明技術的指標 | 利用条件 | 環境区域 | |||
---|---|---|---|---|---|
E1 | E2 | E3 | E4 | ||
最大鉛直面照度(Ev:ℓx) | 減灯時間前 | 2 | 5 | 10 | 25 |
減灯時間以降 | 0 | 1 | 2 | 5 | |
照明器具の光度(I:cd) | 減灯時間前 | 2500 | 7500 | 10000 | 25000 |
減灯時間以降 | 0 | 500 | 1000 | 2500 | |
上方光束の比(ULR) | 設置位置での照明器具水平面から上に照射される光と器具総光束の比 | 0.0% | 2.5% | 5.0% | 15% |
建物表面の輝度(Lb) | 平均照度×反射率/πより求める | 0.1/0注)cd/m² | 5cd/m² | 10cd/m² | 25cd/m² |
看板等発光面の輝度(Ls) | 平均照度×反射率/πより求める | 50/0注)cd/m² | 400cd/m² | 800cd/m² | 1000cd/m² |
|
(参考文献 環境省:光害対策ガイドライン 令和3年3月改訂版(2021))
広告物照明として配慮する範囲は、人工光を利用する屋外広告物全般と屋外広告行為(移動式看板、自動販売機、サーチライトなど)で、照度、輝度を与える範囲を適正に設定することを求めています。具体的な配慮事項としては、主に「光の性質に関する配慮」や「省エネルギーに対する配慮」を要請しています。
光の性質に関する配慮としては、点滅させないこと(発光部分、照射範囲)、動かさないこと(発光部分、照射範囲)、投光照明を着色しないこと(環境配慮としてフィルターをかけることは除く)が重要です。省エネルギーに関する配慮としては、効率のよい光源の使用を推奨すること、点灯時間に関する配慮(管理・運用上の配慮)を行うことが重要です。
輝度の低減

発光面が均一な照明器具の例
LED照明器具の発光部の輝度分布が不均一な場合は、均一な場合よりも不快グレアを感じやすいため、発光面の輝度分布を均一にするような工夫が求められます。屋外照明器具の不快グレアを抑制するために配慮すべき事項は、一般社団法人照明学会JIEG-011(2018)「屋外歩行者空間におけるLED照明の不快グレアに関する指針」が参考になります。
色温度
青色光は、人、動植物、夜空の明るさなどに影響を与えることが報告されています。環境影響を抑制するためには、夜間の屋外照明は電球色などの相関色温度の低いものが望ましく、夜空を暗く保つには、上方光束を抑えつつ、照明の相関色温度を3000K以下にすることが望ましいとされています。
一方、相関色温度の高い光源の方がエネルギー効率が高いため、設置台数を減らしたり消費電力を削減するには有利となります。適切な相関色温度は照明の目的によって異なるため、目的に応じた光色や相関色温度を選ぶ必要があります。

2700K
電球色

2800K
電球色

3000K
電球色

3500K
温白色

4000K
白色

5000K
昼白色

6500K
昼光色
各光源色の相関色温度の目安
(2025年4月25日入稿)
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