創造人×話

ダンスとテクノロジーを融合させた新たな表現の世界を切り拓いていきたい。

藤本 実さんmplusplus株式会社 代表取締役社長兼CEO
Lighting Choreographer

今回は、LEDを用いたダンスパフォーマンスシステムの開発から演出、テクニカルディレクションなどを行うクリエイティブカンパニーmplusplus(エム プラス プラス)株式会社 代表取締役社長兼CEOの藤本実さんをご紹介します。ご自身がダンサーでもあり研究者でもある藤本さんは、高い技術力を背景に、これまでの概念にとらわれないダンスとテクノロジーを融合させたパフォーマンスの新しい表現をつくり続け、その斬新な発想と才能で国内外から注目されているメディアアーティストです。

ウェアラブル・コンピューティングとダンスパフォーマンスを融合させた新しい表現を研究していらっしゃる藤本さんは、EXILEや三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEをはじめとする国内有名アーティストのドームツアーやNHK紅白歌合戦のステージで光の演出も手掛けられるなど、幅広く活躍されていらっしゃいます。まずは、テクノロジーとダンスの融合についての研究を始められたきっかけからお聞かせください。

私は中学生の頃からストリートダンス、特にブレイクダンスに興味を持ち始め、まだダンススタジオがほとんどない時代だったため、駅前などで練習をしていました。高校生になって初めてダンスバトルのイベントに行ったのですが、そこで繰り広げられていたパワフルな光景に衝撃を受け、とても感動したことを今でもはっきりと覚えています。大学に進学してからはダンスサークルに入ってますますダンスの練習に励みました。元々スピーカーなどの音響機器が好きだったこともあり、神戸大学の電気電子工学科に進んだのですが、研究とダンスを結びつけて考えることはありませんでした。

SAMURIZE from EXILE TRIBE

4回生になると研究室での研究が始まるわけですが、ウェアラブル・コンピューティングなどの研究をしている塚本研究室に配属を希望しました。そこで、初めてエンターテインメントとテクノロジーを組み合わせるジャンルがあることを知りました。研究テーマを決める際、教授に「せっかく続けてきたのだからダンスを使って研究をしてみたら」と言われて自分の方がびっくりしたというか、その言葉がきっかけとなって、ダンスとテクノロジーの研究を始めました。

最初はどんな研究から始められたのでしょう?

Lighting Choreographer(2011)

当時は身につけられる小型センサーがようやく出てきた頃で、研究室で開発していた無線の加速度センサーを使って、足につけてダンスを踊ると、そのステップに合わせて音を奏でることが出来るシステムなどを作っていました。ダンスとテクノロジーを組み合わせる研究を続ける内に、自分のやりたいことがはっきりと絞られてきたように思います。2009年度には経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している未踏プロジェクト(人材発掘・育成事業の公募)から、LEDを装着した服とその同期システムである「Lighting Choreographer(ライティング・コレオグラファー)」を開発するための助成金を頂きました。またオーストリア・リンツ市で開催されるメディアアートの世界的な芸術祭「アルスエレクトロニカ」にその装置を自ら装着してダンスパフォーマンスを行い高く評価されました。YouTubeにアップした動画は、ブログやSNSで拡散され、講演依頼など海外の方々からオファーをいただくようになりました。

「Lighting Choreographer」という新たな表現の世界を切り拓いていらしたと伺いましたが、どのようなものなのかを簡単にお教えいただけますでしょうか?

光の振付師という意味を持つ「Lighting Choreographer」は身体と音楽と光の関係に焦点を当て、これを組み合わせることで身体表現を拡張することを目的としています。光と音をシンクロさせた新しいダンスのジャンル、新しいエンターテインメントという位置付けで、言葉自体も自分で考えた造語ですし、大量のLEDを制御するプログラムやソフトウエアも自ら開発しました。そして、衣装につけたデバイスを遠隔でコンピュータ制御し、ダンサー達のフォーメーションや振り付けとLEDのライティングが音楽と完全にシンクロするパフォーマンスを可能にしました。

SAMURIZE from EXILE TRIBE

EXILEとの仕事はどのようにして始まったのでしょうか。

SAMURIZE from EXILE TRIBE

私の作品をYouTubeで見てくださったようで、ある日、HIROさん側から連絡がありました。会ってみると、ご自身がパフォーマーを引退するドームツアーでLEDを使った演出をして欲しいというお話でした。実際にツアーをする中で手応えを感じてくださり、実力派ダンサーによるLEDの光の演出とダンスによるパフォーマンスチームを作ろうということになりました。それが現在の「SAMURIZE from EXILE TRIBE」です。私は当時、大学で先生をやっていたのですが、両立させるのは難しいと判断して大学を辞め、2013年にmplusplus株式会社を立ち上げて今に至ります。