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創造人×話

私にとって金魚は単なるモチーフではなく、自分自身の内面を表現し、人間の本質を追求する言葉だと考えています。

深堀 隆介さん金魚絵師・美術作家

今回は、透明樹脂とアクリル絵具を駆使した独自の斬新な手法で、まるで生きているとしか思えない金魚の作品を数多く発表され、国内はもとより海外からも高い評価を受けていらっしゃる金魚絵師・美術作家の深堀隆介さんをご紹介します。テレビやラジオ、雑誌など様々なメディアで取り上げられることも多く、木曽桧枡の中に金魚が泳ぐ本物と見紛うばかりの作品をご覧になったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

宴月 Engetsu

最初は本物の金魚がそこにいるのでは?という驚きを、そして実はそれが樹脂に描かれた平面の絵画であることを知って感動を与える深堀さんの完成度の高い作品は、見る人を魅了し、年齢や国籍を問わず世界中に大ファンがたくさんいます。まず始めに、深堀さんが、金魚をテーマとした作品に取り組まれるまでのお話をお聞かせください。

私は美術大学を卒業後、フリーランスを経てディスプレイの制作会社に就職したのですが、現代美術の作家を目指して退職し、作家活動に専念していました。とは言え、当初は作風もバラバラでなかなか上手くいかず、本当につくりたいものが何か分からなくなり、もう美術なんてやめようと思った日がありました。

その時にふと、部屋の片隅にあった水槽が目に止まったのです。そこには、7年前にお祭りの金魚すくいの出店で売れ残っていた金魚をたくさんもらい飼っていた中で最後に生き残った1匹の金魚がいて、その赤い金魚を上から見た時に、雷に打たれたような衝撃を受けました。さほど可愛がりもせず、何となく飼っていたので水も汚れていたのですが、その中で生き続け20cm以上になっていた金魚はとても美しく神秘的で、背中がゾクゾクするような感覚になり、「自分が描きたい世界がここにあった」ことに気づくと同時に創作意欲をかきたてられました。一匹の金魚に救われたこの日の出来事を、私は「金魚救い」と呼んでいて、啓示を受けたような感覚でした。

一匹の金魚が転機となり、その後様々な金魚を描く中で、樹脂を使った極めて独創的な技法を編み出し、アート界で大きな反響を呼んだ「金魚酒」を発表されたのですね。

2000年に金魚をテーマにした作品づくりを始めて試行錯誤の末、器の中に高透明の樹脂を流し込み、表面にアクリル絵具で金魚を部分的に描き、さらにその上に樹脂を重ねて描く作業を続けることで立体的な金魚を表現するという技法に辿り着きました。私にとって金魚は単なるモチーフではなく、言語であり、私自身の内面の感情を表現する手法でもあるのです。金魚を通して人間の本質を描きたいという思いで作品づくりを続けていますので、樹脂を使ったこの技法を編み出してから、もう18年ほどが経ちましたが、金魚がこれからも私の創作テーマであることに変わりはありません。

須磨 Suma
金魚酒 命名 彩傘 Kingyo-sake name AYAGASA

作品をつくる上での苦労、そして喜びについてお聞かせください。

私の作品は、器の中に深さ1cm程度の透明樹脂を入れて硬化するまで2日間程待ち、固まったらその上にアクリル絵具で金魚の一部分を描き、また一層透明樹脂を流し込んでさらに2日間待つ、という工程を繰り返すため完成まで2カ月、時には1年とかなり時間がかかります。場合によっては2~3mmの透明樹脂を重ねたり、周りの温度にも左右されたりと、作品づくりは大変で体力も忍耐力も必要なのですが、自分の脳内で美しいと思う金魚を創り出し、それをかたちにしていく喜びがあります。そして、つくり上げた作品を皆さんが観て喜んでくださると苦労も報われます。

蒼月 Sougetsu

作品を制作する際に写真を見たり模写をしたりしないので、私のつくる金魚はこれまで飼っていた金魚たちの集大成であり、彼らの魂が宿ったオリジナルの金魚、想像の産物です。突き詰めると、金魚の赤い色や鱗などの美しさを紐解くための創作は、あの「金魚救い」の出来事で感じた金魚の本質的な“美”への追求に繋がっているのだと思います。夜店での金魚すくいなど、日本人にとって馴染みのある金魚は、人間が意図的に品種改良を重ねて生み出したもので、諸説ありますが中国で1500年、日本でも500年以上の歴史があると言われています。ある意味で存在自体に哀しさや儚さを抱えた金魚の妖しい美しさを表現するために、薄いヒレが透過し青や緑の内臓までもが透けて見えるような様、そして器に落ちる影を見せることが出来る、この透明の樹脂を使った積層絵画という技法を私は編み出したのです。

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