創造人×話

野菜の新しい食べ方を提案することで、日本の農業を元気にするお手伝いをしていきたいと考えています。

柿沢 安耶さん「パティスリー ポタジエ」オーナーパティシエール

野菜のようにカラフルでポップなイメージの「パティスリー ポタジエ」店舗外観。

そして東京・中目黒に野菜スイーツ専門店「パティスリー ポタジエ」を開店されたのですね。

都会で暮らす人々に、もっと野菜の美味しさを知ってもらいたい。そして生産者とお客様をつなげたいと思い、2006年に「パティスリー ポタジエ」を始めました。お客様を気持ちだけでも畑に連れて行きたいという想いをPotager(フランス語で家庭菜園)という店名に込めています。カロリーが高く、健康に悪いというイメージのスイーツも野菜でつくればヘルシーですし、カラフルな野菜は自然の色味を出してくれるので食品添加物や着色料も必要としません。青菜が嫌いだったお子様が私のケーキがきっかけで食べられるようになったと喜んでいただいたりすることがあり、とても嬉しく思います。

糖質が表示されているローカーボ&ベジスイーツ。

野菜嫌いの子ども達が多い中、小学校で食育の授業をさせていただく機会も多いのですが、ピーマンやナスなどを使ったケーキを一緒に楽しみながらつくることで、嫌いな野菜のイメージが変わり苦手意識がなくなるようです。先日、小学生を対象とした全国パティシエ選手権というコンクールの審査員をしてきたのですが、決勝に残った子ども達の内2人の作品が野菜ケーキで、野菜スイーツが浸透してきたことは嬉しい驚きでした。

おかげさまで2016年「パティスリー ポタジエ」は10周年を迎え、カロリーではなく糖質を制限することで血糖値が上がりにくいスイーツをつくり、「ローカーボ&ベジスイーツ専門店」に進化させました。ケーキのプライスカードに糖質を表示し、安心して召し上がっていただけるスイーツを提供しています。

柿沢さんは、農業支援活動や商品開発など、幅広く活躍されていますが、その活動と今後の抱負について教えてください。

青豆のドラジェ。

地域の農業の活性化などに関わる仕事の比率も高く、その一つとしてお土産プロジェクトがあります。たとえば秋田県には、通常の3枚ではなく5枚の葉が特徴的な「あきた香り五葉」という品種の枝豆があるのですが、一般的にはあまり知られていません。そこで、この香り豊かな枝豆をフリーズドライにしてチョコレートでコーティングしたお菓子「青豆のドラジェ」をパッケージデザインも含めて開発・プロデュースしました。ヨーロッパで幸せを届けるお菓子として有名なドラジェを枝豆でつくることで秋田県の農産品の魅力をアピールできているのではないかと思います。

また、東京でも伝統野菜の小松菜を使ったクッキーを作り、東京スカイツリーで販売したりしています。今後も全国のご当地野菜スイーツをつくっていけたら楽しいなと思っています。

店内にはローカーボの焼菓子も豊富に揃っている。
野菜をふんだんに使ったレシピが盛りだくさんのレシピ本。

実際に行ってみないと見つけられないものもたくさんあり、青森に行った時には、ガマズミ果実「ジョミ」という飲み物を発見しました。最初は全く知らないものだったので調べてみたところ、昔は山で狩りをするマタギが非常食として食べていた栄養価の高い赤い実であることが分かりました。ガマズミの名も〈神の実〉が変化したと言われているそうで、ポリフェノールやビタミンCが多く含まれる、まさに日本のスーパーフルーツなのです。とても興味を持ち、現在商品化を進めています。これからも、野菜の新しい食べ方や可能性を提案し続け、日本の農業を元気にするお手伝いをしていきたいと考えています。

柿沢 安耶(かきさわ あや)

1977年 東京生まれ
「おいしいだけでなく、食べた人が健康になれる料理やスイーツ」を提供するお店をやりたいと志し、フレンチや自然食などを学ぶ。
オーガニック野菜生産者との繋がりからもっと野菜の魅力を伝えたいと考え、2006年に世界初の野菜スイーツ専門店「パティスリー ポタジエ」を東京・中目黒に開店。
2016年4月より低糖質=ローカーボベジスイーツ専門店へと進化させ、血糖値が上がりにくく太りにくいスイーツになったことで、より多くの方にベジスイーツを楽しんでいただく可能性を広げている。
また、日本の「食育」や「農業」への関心も高く、農業支援活動やイベント出演なども行い、小学校での食育セミナー、生産地での野菜作り体験ツアー、料理教室講師なども実施している。

パティスリー ポタジエ
東京都目黒区上目黒2-44-9