創造人×話

これまでの慣習を見直し、何かを刷新することから新しいデザインのかたちが生まれると考えています。

大野 力さん建築家

デザインレギュレーションは照明の設置場所などについても細かく決められたのでしょうか。

通常、各ショップの照明プランはそれぞれの設計事務所が担当し、共用通路の照明は全て施設側で設置するのですが、今回は専用部の天井がところどころ共用通路に越境しているので、共用通路の照明も一部ショップ側が設置しています。その中で、設置可能ラインの設定等、最低限のルールを決めることで照明配置がバラバラにならないよう考慮しました。これは、施設側には用意すべき照明の量が減るという利点、ショップ側にはファサードを綺麗に照明できるという利点があります。例えば、ショップがマネキンを店頭に並べる場合、これまでは専有部天井からしか照明できなかったので、マネキンの真上から頭頂部に光が当たるだけで、正面に影が落ちてしまうということが多々あったのですが、共用通路側に照明を設置することで、マネキンの正面にしっかりと光をあてることが出来るのです。このように、お互いにとって利点のある関係性をデザインすることが大事だと思います。

NEWoMan 1Fエントランス部分

今回のプロジェクトには広場も含まれるなど、一つの駅・商業施設という枠を超えて新宿駅南口周辺の街づくりにも寄与するものになったのではないでしょうか。

線路上に広がる人工地盤の広場は約2000m²という広さを持ちます。その広さ全体を使いこなすべく、アンジュレーション(起伏)を設けながらスケールを分節し、その中に家具的な機能を分散配置することで、人々が思い思いの時を過ごせるような場所づくりを図りました。またNEWoManの1階前面道路では、環境美化計画として歩道を拡幅してオープンカフェ席やベンチを設置し、街路樹や草花による緑化をするなど、街に波及する賑わいを創出しています。

周辺エリアの開発は現在も進行中で、2016年12月には甲州街道の高架下に、新宿観光振興協会が運営する区の観光案内所がオープンしました。甲州街道の高架下を活用するために国の協力を受けて区が進めてきた開発の事業者として選ばれたルミネの依頼を受け、この施設の設計も担当させていただきました。

外部からの木天井が連続する改札内コンコース

最後に建築家として大切にされていること、また今後の展望をお教えください。

私は、これまで当たり前だと考えられてきたことが、もしかすると当たり前ではないかもしれないという考えを持って仕事に取り組んでいます。どんなプロジェクトでも、“慣習”を疑うところから始めると、9割位はやはりその慣習的なやり方が正しいという結論に達したとしても、1割程度は刷新する必要があることに気づきます。その1割を更新し予件を超える新たな提案をすることができればデザインは自ずと決まっていくので、とても大事だと考えています。現在も、かなり規模の大きなプロジェクトが進行しつつ、一方で延床面積90m²位の小さな住宅設計も行うなど様々な規模の仕事をしていますが、点づくりと面づくり、どちらも両立させることが大切だと思っています。

JR新宿駅新南エリアのプロジェクトは、竣工後に訪れる度に、私が描いたスケッチの通りに広場で子供たちが遊び、人々が寛いでいる様を見ることができ、とても嬉しく感慨深いものがあります。今後も不特定多数の方々が利用する場であるパブリックスペースの設計など、仕事のスケールを上げていきたいと思いますし、民間とパブリックが交わる場所や新しい公共空間の在り方などについてケーススタディを重ねていきたいと考えています。

NEWoMan前の歩道も大野さんによるデザイン

大野 力(おおの ちから)

1976年大阪府生まれ、一級建築士。

金沢大学工学部で都市工学を学び、卒業後にフリーランスを経て2004年に(株)シナトを設立。建築・インテリア・インスタレーションアート等、様々な規模・用途のプロジェクトを国内外で幅広くデザインし、これまでに手がけた作品は約300に上る。またその多くが世界各国で賞を受け、国際的な評価も高まっている。

2016年春には全体環境デザインを担当したJR新宿駅新南エリア(改札内外コンコース・駅前広場・商業施設NEWoMan)が完成。京都造形芸術大学・日本工業大学・昭和女子大学にて非常勤講師も務める。