創造人×話
私にとって縫うことは楽しみであり、癒しでもあります。
Cheerkingさん布作家

今回は布作家のCheerkingさんをご紹介いたします。Cheerkingさんは、神奈川県茅ヶ崎市を拠点に、端切れや古着を使ってさまざまな動物たちの人形や小物、タペストリーなどの作品をつくり続けていらっしゃいます。温もりのあるやさしい作風が印象的で、見る人を幸せな気持ちにしてくれる素敵な作家さんです。
はじめに、Cheerkingさんが布作家、人形作家として活動を始められたきっかけからお聞かせください。
もともと何かをつくること、なかでも縫う作業が好きでした。しかし、決まった形に仕上げなければならないという“こうあるべき”的な概念にとらわれていたのか、心から夢中になれるところまでは至っていませんでした。そんな私が現在ものづくりを続けているのは、ある時、何気なく布を丸めて縫った形に顔を刺繍して猫みたいだなぁと思っていたものを、夫が営む辻堂のコーヒーショップに置いていたところ、それを欲しいと言ってくださる方が現れたことが始まりでした。
その猫の顔をブローチにし、買ってくださった方から、この子の体をつけて欲しいとご依頼いただき人形を作ったのです。その頃から、服を作る際に出る端切れをくださる方がいらしたり、古道具屋さんが古い布をたくさんくださったりと、手元にどんどん布が集まるようになりました。その布を眺めているうちに、いろいろな動物の姿が浮かんできて、気がつけば人形づくりにすっかり夢中になっていました。
今回、お話を伺うためにお邪魔させていただいている、この場所「LAMACOFFEE/LAMASPACE」さんは、Cheerkingさんのご主人が経営されているカフェなのですね。古民家風の外観もおしゃれで、リラックスできる雰囲気がとても居心地の良い空間です。雑貨も扱い、2階にはギャラリーも併設されていらっしゃると伺いました。
はい。私の作品も置いてありますし、2階のギャラリーでは定期的にさまざまな作家さんの個展を開催しています。夫も私も茅ヶ崎出身ではありませんが、空が広くて海が近く、ゆったりとした時が流れる湘南の暮らしが、私たちにはとても合っているように思います。
ご出身はどちらなのでしょうか?
私は福岡県の朝倉という自然豊かで田園風景が広がるのどかな場所で生まれ育ちました。高校からは福岡市まで片道2時間半程かけて通学していましたが、それまではマクドナルドにも行ったことがないような子どもで、毎日自然を相手に遊んでいました。その後、福岡ではちょっと変わったお花屋さんで働いたり、かつてニューヨークにあり日本でも青山などにショップを構えていた、家具やインテリアのセレクトショップに勤めていたりしたのですが、そのお店もなくなり、旅をしたりして、いろいろな経験を積んだことが今の私につながっていると感じています。
Cheerkingさんがつくり出す動物たちは、どれも非常にユニークで、ユーモラスな表情や造形の一つひとつに愛情が込められているように感じます。端切れや古い布を用いて制作されている理由についてお教えください。
私は、本来なら捨てられてしまう端切れを使って、それらが形を成し、新たな居場所を得ることに喜びを感じると同時に、もったいないという精神を大切にしています。人形は、直接布にハサミを入れ、まち針で型づくりをして縫い、端切れを中に詰めながら輪郭を整えてまた縫う、という作業を繰り返してつくっています。粘土のように成形していく感覚です。その作業が自分には合っていると思いますし、頭でイメージした人形は、布を通すと違った表情に仕上がることも多いのですが、その“予想外”がとても気に入っています。固定観念に縛られずに、自由な発想でものづくりを楽しみたいという気持ちが根本にあるのだと考えています。
確かに、楽しんでつくっていらっしゃるという気持ちが、作品から溢れているように見えます。そんなCheerkingさんの作風はどのようにして生まれたのでしょうか。
私には3人の子どもがいますが、そのうちの1人の娘は先天性の病気で、1歳の誕生日を迎えることができませんでした。その後、心から楽しむことも喜ぶこともできなくなり、悲しみにくれるばかりの日々が続きました。しかしある時、目の前にいる家族を見ていなかった自分に気づき、娘の分まで楽しんで生きよう、と決めたのです。今はとにかく、好きなように縫い続けることを楽しんでいます。
とても辛く大切なお話をお聞かせくださり、ありがとうございます。作品に宿る不思議な温かさは、Cheerkingさんの深い想いから生まれているのかもしれません。他の作家さんとのコラボも多いとお聞きしましたが、どんな作品を制作されていらっしゃるのでしょうか。
鎌倉にある帽子作家さんが営むアトリエ「Pajaro(パハロ)」で帽子に合わせる飾りをつくってコラボしたり、ネパールにあるゲストハウスにタペストリーをつくって展示していただいたりと、ありがたいことに多くの出会いがあり、いろいろな作品をつくる機会に恵まれています。昨年の葉山芸術祭では、ラオス・カンボジアの手織り布などを扱っているアトリエ「PONNALET(ポンナレット) 葉山の家」で開催された着物のファッションショーに参加させていただき、刺繍を施した布で着物をつくることができたのもとても楽しく、やりがいを感じることができる経験でした。
全てを手仕事で制作されるのですから、つくり上げるには相当な時間がかかるのだと拝察いたしますが、Cheerkingさんは本当に“縫う”ことがお好きなのですね。最後にこれからの抱負をお聞かせください。
周りの方々のおかげで今があります。これからもただひたすら縫い続け、目の前にやってくることに思い切り、精一杯取り組んでいきたいです。作品をご覧いただいたご縁で、東京・蔵前にある「ngumiti(ヌグミティ) 蔵前」というショップ・アートスペースに作品を置いていただいたり、Instagramをご覧になった方から、台湾・台南で2月に開催された魔法屾林 shen shen marketにお誘いいただいたりと、活動の場が広がっていることがとても嬉しいです。縫っている時間は、ほかのことは何も考えずに集中できる大切なひとときでもあります。「縫う」ことは私にとって「癒し」なのです。この先も楽しく、たくさんの動物たちを生み出しつつ、誰かに寄り添えるような作品をつくっていきたいです。
Cheerking
福岡生まれ 茅ヶ崎在住
カフェギャラリー LAMACOFFEE/LAMASPACEを夫と共に運営
湘南を中心に活動中
時間の限り縫い続ける日々
展示情報などはInstagramにて発信しています。