小さな光が、大きな未来に。

75th Anniversary - Since 1944 -

岩崎電気は今年、創立75周年を迎えます。
75年前の情熱から生まれた小さな光が、
私たちを照らしてきたように、
未来を照らす新たな光を私たちは創造し続けます。

25年後の照明を語る

第1回

松本零士「あかりは点から面へ」

都市の風景もガラリと変わる!?
SFの大家・松本零士さんが予見する
未来の照明の進化とは――

「面」で明るくする時代へ

電球でも蛍光灯でも、あかりをつけると影が出ますよね。でも私は、将来の照明というのは、影のない光になると思っています。
以前、東京タワーの次のタワーということで、練馬区に高さ1008メートルのタワーを作ろうとしたことがあるんです(協議会特別顧問を務め、デザインを手掛ける)。その時に使おうとしていたのが、「光を伝送する素材」です。建物の壁にその素材を使っておけば、向こう側に当たった太陽の光が、こちらの日陰の方にも伝送される。一ヶ所を照らすと、その光が建物全体に届くわけです。ですから影ができません。残念ながら建設は実現には至りませんでしたが、そうした360度明るくする素材は、今、世界中で開発されつつあると思います。光を伝送しているだけなので安全ですし、これは理想的な照明だと思いますね。

そうなってくると、照明というものの感覚も変わってくると思うんです。天井なら天井全部を、壁なら壁全部を、影のない光として使うことが可能な時代がいずれ来る。天井一面が光る、窓一面が光る、床でも何でも、みずからを光らせて、全体を明るくするわけです。
トンネルも壁全面をまぶしくない程度に明るくできるし、スタジアムでも屋根全面、壁全面、あるいは地面全体を光らせることができる。建物にしろ、道路にしろ、乗り物にしろ、「点」ではなく「面」で明るくする時代が近いうちに必ず来ると思っています。

都市全体がそういうふうになれば、今のように、ひとつひとつの光の点が並んでいるのではなく、全体がぼわあっと明るくなる。都市環境や風景も変わりますね。
夜になると、ビル全体が発光する。夜景も今までのような点描ではなくなります。あるいは、島全体、海岸全部を光らせることもできるわけです。もちろん、明るくする必要のないところは暗いままでいい。自然を傷つけてはいけません。

そんな未来のことを考えるのは面白いのですが、全部が明るいと絵には描きにくいですね。未来のSFを描くのに、点々の光じゃ具合が悪い。全体がぼおっと光ってないといけない。例えば銀河鉄道999も列車全体が光っていることになってしまいますね。

地球の視点で考える

音もなく、熱もなく、放射線や電磁波の影響もない、そういう照明素材はすでに開発中で、いずれ実現するだろうと思っていますが、そのエネルギー源というのがどういうものなのか、私には今はわかりません。でも、太陽光パネルを見ていると、ああやって光を受けられるのだから、照り返すことも可能だろうと思うのです。

昼間は空全体が明るいわけですから、その明るさを使う方法が何かあるんじゃないか。夜は、地球の反対側が明るいのだから、その光を地球の裏側まで届ける方法を考えればいいのではないか。いずれにしても、自然エネルギーに目を向けるのは、今、一番大事なことだと思います。

ただ、エネルギーを得るためにやたらと地球に穴を開けるのはやめてくれ、というのが、私の切実な願いです。地球内部の圧力を人間の手によって変えたりしたら、とんでもないことになる。すでに世界中でその兆候は表れています。
金星にもかつては高度な文明があったという説があるのですが、今、地球は第二の金星になりつつあると思うのです。金星と同じ運命をたどらないために何をすべきか。未来の照明には、地球環境を守るという点でも期待しています。

想像力が未来を進化させる

SF的にいろいろなことを考えるのは楽しいのですが、それがSFでなくなる日がやってきます。空想科学(Science Fiction)というけれど、それは人間が思いつく未来のアイディアなんですよね。そして、そのアイディアを現実化する人間が出てくるんです。
誰かの頭の中に何かのアイディアが発生すると、別の誰かが実際に作ってしまう。人類はそれで進化していってるわけです。だから、空想というのは大事。つまり、想像力ですね。

私は小学生の時、京大の荒木俊馬博士の『大宇宙の旅』という本を夢中になって読みました。それから、H・G・ウェルズの『生命の科学』。それで、全宇宙の概念とか、生命体の起源なんかを把握したようなつもりでいたんです、勝手な思い込みですけどね。それからSF映画を見たりして、“妄想”を育み、それを一生懸命に描いた。それから何年もして、昔描いた建物に似たビルを見かけ「ああ、俺、未来を描いていたんだなあ」って感動してたら、そのビルの設計士に会った時、「あなたの作品を見てこれを作ったんです」って言われてびっくりしたことがありました。まさに、お互いに刺激し合って、進化していたわけです。

「人は人、我は我なり。されど仲良き」――。これ、私が勝手に考えて、小学生の時から書いていた言葉なんですけど、進化の仕組みってそういうことなんじゃないかと思います。未来の照明も、そんなふうに進化しているんじゃないか。近い将来、きっと形になって現われると信じています。

Profile

松本零士(まつもと れいじ)

1938年、福岡県久留米市生まれ。1954年、『蜜蜂の冒険』で漫画家デビュー。代表作に『宇宙戦艦ヤマト』、『銀河鉄道999』など。
宝塚大学教授、京都産業大学客員教授、デジタルハリウッド大学特任教授を歴任。漫画家の牧美也子氏と24歳で結婚。早稲田大学名誉教授で元三菱重工業長崎研究所主幹研究員の松本將氏は実弟。SF漫画作家として知られるが、少女漫画、戦争もの、動物ものなど、さまざまなジャンルの漫画を描いている。アニメ製作にも積極的に関わり、1970年代半ばから1980年代にかけては松本アニメブームを巻き起こした。旭日小綬章、紫綬褒章、フランス芸術文化勲章シュバリエ受章。練馬区名誉区民。