技術資料

LEDioc FLOOD BLITZ® 80Wタイプ - LED投光器 -

株式会社 アイ・ライティング・システム 機器技術部 第二機器技術課

キーワード

LED,投光器,高効率,消費効率,省エネ,CO₂削減,長寿命,軽量化

1.はじめに

近年の照明はLED化が進んでおり,当社も各市場にLED照明器具を投入し,さらに高効率化や軽量化を行ったリニューアル商品を発売している。

投光器においては,従来のHID400~1000W丸形投光器の代替となるLEDioc FLOOD BLITZ®200W・400Wタイプを商品化し,一方で当社得意市場の一つである従来のHID150W以下クラスのLED器具において2009年以降にLEDioc FLOOD NEO 35・50・95を発売し,さらにこれらを軽量化,高効率化したLEDioc FLOOD NEO 40・60・80・100を投入している。さらに今回は,丸形投光器タイプの商品の要望が高まってきたことから,このクラスのHID代替となるLED投光器の開発に着手した。

本商品は,メタルハライドランプ150Wを適合ランプとしたアーバンアクトβ(丸型)の代替となるライトアップやスポットライト,看板照明や遠方照明等をターゲットとしたLED投光器である。

2.商品概要

本商品は当社オリジナルのLED40Wカスタムパッケージを搭載し,最大光度の高い狭角形配光を実現している。

本商品は,2種類の反射鏡,2種類の前面カバーの組み合わせにより狭角形,中角形,広角形の3種類の配光を持つ商品展開となっている。(JIS C 8113の配光区分)

2.1 商品構成

表1に商品構成を示す。本商品は計12品種から構成される。品種構成は,配光が3種類,塗装色が2種類,色温度が2種類となる。

表1 商品構成
配光 LED 塗装色 形式
狭角形 5000K
Ra70
ダークグレイ E0821N/SA1/2/2.4/DG
ホワイト E0821N/SA1/2/2.4/W
3000K
Ra80
ダークグレイ E0821LW/SA1/2/2.4/DG
ホワイト E0821LW/SA1/2/2.4/W
中角形 5000K
Ra70
ダークグレイ E0822N/SA1/2/2.4/DG
ホワイト E0822N/SA1/2/2.4/W
3000K
Ra80
ダークグレイ E0822LW/SA1/2/2.4/DG
ホワイト E0822LW/SA1/2/2.4/W
広角形 5000K
Ra70
ダークグレイ E0823N/SA1/2/2.4/DG
ホワイト E0823N/SA1/2/2.4/W
3000K
Ra80
ダークグレイ E0823LW/SA1/2/2.4/DG
ホワイト E0823LW/SA1/2/2.4/W

2.2 外観

図1に外観図を示す。

図1 外観図

2.3 外形・構造図

図2に外形・構造図を示す。

図2 外形・構造図

3.特徴・機能

3.1 放熱構造

3.1.1 灯体放熱構造

本商品は軽量化を達成するため,アルミダイカストのボリュームを低減しつつ温度を低下させる課題があった。そこで,本商品は熱伝導中心の放熱設計ではなく,放熱フィンを増加し表面積(放熱面)を増加させ,熱放射中心の放熱設計に変更することにより,LEDパッケージの温度を下げることが出来,その結果質量低下を達成することが出来た。

3.1.2 LED・電源部品放熱構造

本商品は器具の軽量・コンパクト化と定格寿命60000時間を達成するため,器具内部容積を低減しつつLED・電源部品の温度を低下させる必要があった。

図3 放熱構造

そこで図3のように,発熱源であるLEDパッケージを外気に直接近い位置に配置し,その裏側にある放熱フィンの熱放射を活用することで,灯体アルミダイカストの温度が上昇する前にLEDパッケージ熱が外気へ対流する構造となり,器具内部温度の低下(LEDパッケージ熱が及ぼす,電源部品への熱干渉の低下)に繋がり,電源部品の温度低下を達成し,器具内部容積の低減(軽量化)・定格寿命60000時間達成に繋げた。

表2に仕様を示す。

表2 仕様
項目 仕様
灯体 アルミダイカスト
電源フィン アルミダイカスト
アーム ステンレス
締め付けネジ アルミダイカスト
反射鏡 アルミダイカスト
前面カバー アクリル
電源
入力電圧
100/200/242V
周波数
50/60Hz共用
塗装 ポリエステル樹脂焼付塗装
仕上色 ダークグレイ(マンセル N3)
ホワイト(マンセル N9.5)
LED LED40W×2
使用周囲温度 -5℃~35℃
質量 4.0kg±10%

3.2 光学性能

本商品は器具の最大光度を最大限まで上昇させるために,LEDパッケージの発光面積をより小さくする必要があった。

しかし,従来LED素子では発光面積を小さくすることでLED素子搭載数が減少し,必要な光束値を確保できないという課題があった。

図4 LEDパッケージ最大光度の効率化

そこで,LEDパッケージをカスタムし,LED素子を従来素子からラージ素子に変更することで,1素子に流せる電流値(光束値)が従来素子の約2倍となり1素子あたりの光束値を上昇させる事が出来た。これにより光束値を維持したまま搭載素子数を削減でき,LEDパッケージ中央に素子を配置させることで,消費電力80Wで200,000cdと高い狭角配光性能を達成し,遠方照明に適した照明を実現している(図4)。

3.3 優れた省エネ効果

本商品は,消費効率が100ℓm/Wと高効率化を達成したことにより,HID器具アーバンアクトβ(丸形)メタルハライドランプ150Wと比較し約52%の省エネ効果を生み出すことが可能となった(表3)。

表3 従来器具との性能比較

  • Aアーバンアクトβ(広角配光形)+高演色形メタルハライドランプ150W
  • Bレディオック フラッド ブリッツ(80Wタイプ・広角配光)

消費電力※1

  • A498W(166W×3)
  • B240W(80W×3)

約52%省エネ

年間電気料金※2

  • A41,832円
  • B20,160円

21,672円お得

年間CO₂排出量※3

  • A約856.5kg-CO₂
  • B約412.8kg-CO₂

約443.7kg-CO₂削減

光源寿命

  • A9000時間
  • B60000時間

約6.7倍

平均照度

  • A1189ℓx
  • B1041ℓx

明るさほぼ同等

  • ※1:消費電力は、入力電圧200V時の値とする
  • ※2:電気料金目安単価は21円/kWh(税抜)、年間点灯時間は4000時間で算出
  • ※3:CO₂排出量は0.43kg-CO₂/kWhとして算出

4.おわりに

本商品は,放熱構造の改善や高効率のLEDカスタムパッケージを採用することにより,100ℓm/W以上の器具消費効率と高い狭角配光性能を達成することが出来,HID器具の代替え・遠方照明に適した照明が可能となった。照明器具は,用途に合わせた配光性能を必要とする。今回は,丸型投光器の狭角配光性能を必要とした商品の開発を行なったが,今後もこのような技術の採用や新たなアイディアにより,さらなる高効率化や最適な照明環境を生み出すことができる照明器具の開発を行なっていきたいと考える。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第28号掲載記事に基づいて作成しました。
(2013年5月29日入稿)


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