ライティング講座(照明講座)

照明計画資料

トンネル照明 - 基本照明設計

(1)光源及び灯具の選定

1.1 光源の選定

発光ダイオード(LED光源)もしくは放電ランプ(高圧ナトリウムランプ、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、セラミックメタルハライドランプ)を対象に、以下の要件に考慮して選定します。

  • エネルギー消費効率が高く寿命が長いこと
  • 周囲温度の変動に対して、出力が安定していること
  • 光色と演色性が適切であること

1.2 トンネル照明の器具

トンネル照明器具は、トンネルの側壁上部(隅角部)又は天井部の建築限界外に取付けます。
このため、トンネル構造に適した取付方法が採用できる灯具の選定が必要です。また、トンネル清掃作業の際に水の直接噴射を受ける場合は、噴流に対して保護されている(IP*5)灯具を使用し、その他の状況では防雨形の灯具を選択します。さらに灯具の配光は、路面、壁面、天井面に対して光束が適切に配分されるよう取付位置に応じて選定することが求められます。

現在は、直付形で防噴流構造の、耐食性に優れた軽量かつコンパクトなアルミきょう体の灯具が主流です。

1.3 トンネル照明器具の例

トンネル照明器具の例を示します。

LED アルミきょう体照明器具

LED SUSプレスきょう体照明器具

(2)灯具の照明方式

トンネルの照明方式は、以下に示す3種類から選定します。

  • 対称照明方式
  • カウンタービーム照明方式
  • プロビーム照明方式

2.1 対称照明方式

対称照明方式によるトンネル内の様子

縦断方向にほぼ対称な配光を有する灯具を、隅角部に取付けることを「対称照明方式」といいます。 この照明方式は、基本照明や入口照明に用いられます。

対称照明方式による車両進行方向と障害物の見え方。運転者の前方にある障害物は、運転者側の面にも照明器具からの光が直接あたる。

図2.6 対称照明方式

2.2 カウンタービーム照明方式

カウンタービーム照明方式によるトンネル内の様子

走行する車両の進行方向とは逆方向を主に照明する灯具を、隅角部に取付けることを「カウンタービーム照明方式」といいます。この照明方式は、交通量の少ないトンネルの入口照明に適しています。路面輝度が高く、障害物の正面が暗くなることから、路面と障害物の輝度対比が得やすい特徴があります。

カウンタービーム照明方式による車両進行方向と障害物の見え方。運転者の前方にある障害物は、運転者側の面には照明器具からの光が直接あたらない。

図2.7 カウンタービーム照明方式

2.3 プロビーム照明方式

プロビーム照明方式によるトンネル内の様子

走行する車両の進行方向を主に照明する灯具を、隅角部に取付けることを「プロビーム照明方式」といいます。この照明方式は、先行車の背面が明るくなるので、交通量の多いトンネルに適しています。

プロビーム照明方式による車両進行方向と先行車の背面の見え方。トンネル入口において、先行車の背面に照明器具の光を当て明るくする。

図2.8 プロビーム照明方式

(3)トンネル照明の配列方式

トンネル照明の配列方式は、図2.9 に示すように4種類あり、灯具の配光や路面の輝度分布、視線誘導効果、保守及び経済性などに配慮して選定します。

トンネル内の両側に向合せで照明器具を配置

(a)向合せ配列

トンネル内の片側とその反対側に交互に照明器具を配置

(b)千鳥配列

トンネル内の中央に照明器具を配置

(c)中央配列

トンネル内の片側に照明器具を配置

(d)片側配列

S:灯具間隔

図2.9 配列方式

(参考文献 (公社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

(4)灯具の取付高さ

図2.10 灯具の取付高さ

灯具の取付高さは、原則として4~5m程度とします。これにより、路面の輝度分布を比較的均一に保つと同時に、灯具のグレアを少なくする効果が見込めます。

(5)保守率の決定

路面輝度(照度)は、光源の光束低下や灯具の汚れ、及び壁面反射率の低下など経年変化によって設置当初より減少します。この減少の程度を設計時点で見込む係数を保守率といいます。この減少の程度は、道路構造や交通状況はもとより、光源の累積点灯時間や灯具の清掃頻度などによっても異なります。

表2.3は設計に用いる保守率の推奨値を示したものです。保守率の設定に際しては、交通量、車種構成、道路周辺状況及び維持管理を勘案のうえ適切な値を採用する必要があります。

表2.3 保守率の推奨値
区分 保守率
トンネル照明 0.50~0.75

(参考文献 (公社)日本道路協会 :道路照明施設設置基準・同解説(2007))

(6)照明率の算出

図2.11 トンネル断面例

6.1 車道幅員の照明率

図2.11に示すトンネル断面の車道幅員の照明率(相互反射成分を含む)は、式-1、式-2から求めます。

(参考文献 (一社)建設電気技術協会:電気通信施設設計要領・同解説(電気編)(2017))

全路面幅員Woの照明率:U4

U4=A41×U10+A42×U20+A43×U30+A44×U40 (式-1)

車道幅員Wの照明率:U4

U4=U40+WWo×(U4U40) (式-2)

ここで

U4
車道幅員の照明率
U4
全路面幅員の照明率
U10
天井面に対する直射照明率
U20
灯具に近い壁面に対する直射照明率
U30
灯具に遠い壁面に対する直射照明率
U40
全路面幅員に対する直射照明率
U40
車道幅員に対する直射照明率
A41A44
照明率を求めるための係数(伝達係数)
W
車道幅員 m
Wo
全路面幅員 m

6.2 壁面の照明率

トンネル断面の路面上1.0mの壁面Hmに対する照明率は、式-3~式-7にて求めます(図2.11参照)。

全壁面Hの照明率(灯具に近い壁面の場合):U2

U2=A21×U10+A22×U20+A23×U30+A24×U40 (式-3)

全壁面Hの照明率(灯具に遠い壁面の場合):U3

U3=A31×U10+A32×U20+A33×U30+A34×U40 (式-4)

計算範囲Hmの照明率(灯具に近い壁面の場合):U2

U2=U20+HmH×(U2U20) (式-5)

計算範囲Hmの照明率(灯具に遠い壁面の場合):U3

U3=U30+HmH×(U3U30) (式-6)

壁面の照明率:U

U=U2+U32 (式-7)

なお、トンネル断面が非対称又は、左右の照明器具の取付角度が異なる場合には、左右それぞれの灯具からのU2U3を算出する必要があります。

ここで

U2
全壁面(灯具に近い壁面)の照明率
U3
全壁面(灯具に遠い壁面)の照明率
U20
計算範囲Hm(灯具に近い壁面)に対する直射照明率
U30
計算範囲Hm(灯具に遠い壁面)に対する直射照明率
A21A34
照明率を求めるための係数(伝達係数)
H
全壁面高さ m
Hm
計算対象とする壁面高さ m

6.3 壁面輝度比の算出

路面と壁面の輝度比(LwLr)は、式-8にて求めます。

LwLr=KρwπWHmUU4 (式-8)

LwLr
壁面輝度比
K
平均照度換算係数 ℓx・cd⁻¹・m²
ρw
壁面の反射率
π
円周率
W
車道幅員 m
Hm
計算対象とする壁面高さ m
U
壁面照明率
U4
車道の照明率

6.4 照明率を求めるための係数

照明率を求めるための係数(A41A44A21A34)は、道路照明施設設置基準・同解説の付録2に掲載されている表から求めることができます。その一例を表2.4に示します。

なお、路面全幅員 Wo/器具取付高さ Ho、天井反射率及び壁面反射率の値が表にない場合は、比例補完して求めます。

表2.4 反射係数一覧表の例
Wo/Ho 天井
反射率
壁面
反射率
路面
反射率
A41 A42A43 A44 A21A31 A23A32 A22A33 A24A34
1.0 0.10 0.25 0.25 0.047 0.086 1.017 0.036 0.114 1.020 0.086
0.40 0.051 0.151 1.027 0.040 0.189 1.470 0.094
0.60 0.058 0.257 1.043 0.045 0.300 1.101 0.107
0.25 0.25 0.25 0.119 0.093 1.026 0.093 0.119 1.026 0.093
0.40 0.131 0.164 1.037 0.102 0.199 1.057 0.102
0.60 0.150 0.282 1.056 0.117 0.319 1.120 0.117
0.40 0.25 0.25 0.195 0.100 1.034 0.152 0.125 1.031 0.100
0.40 0.215 0.177 1.048 0.167 0.209 1.067 0.110
0.60 0.249 0.308 1.071 0.194 0.340 1.141 0.128
1.2 0.10 0.25 0.25 0.052 0.093 1.018 0.033 0.101 1.018 0.078
0.40 0.056 0.161 1.028 0.035 0.165 1.039 0.084
0.60 0.063 0.270 1.043 0.040 0.260 1.082 0.093
0.25 0.25 0.25 0.134 0.102 1.029 0.085 0.106 1.023 0.085
0.40 0.145 0.176 1.040 0.092 0.175 1.048 0.092
0.60 0.163 0.298 1.058 0.103 0.278 1.100 0.103
0.40 0.25 0.25 0.128 0.110 1.040 0.138 0.111 1.028 0.091
0.40 0.238 0.192 1.053 0.151 0.185 1.058 0.100
0.60 0.271 0.329 1.075 0.172 0.298 1.119 0.114
1.4 0.10 0.25 0.25 0.057 0.099 1.019 0.030 0.090 1.015 0.071
0.40 0.061 0.169 1.028 0.032 0.147 1.033 0.075
0.60 0.067 0.280 1.042 0.035 0.229 1.068 0.083
0.25 0.25 0.25 0.145 0.108 1.031 0.077 0.094 1.020 0.077
0.40 0.156 0.187 1.042 0.083 0.156 1.042 0.083
0.60 0.174 0.311 1.060 0.092 0.246 1.085 0.092
0.40 0.25 0.25 0.238 0.118 1.045 0.126 0.100 1.025 0.084
0.40 0.257 0.205 1.058 0.137 0.165 1.052 0.091
0.60 0.289 0.345 1.079 0.153 0.264 1.103 0.102
1.6 0.10 0.25 0.25 0.061 0.104 1.020 0.028 0.081 1.014 0.065
0.40 0.065 0.176 1.029 0.030 0.132 1.029 0.069
0.60 0.071 0.287 1.042 0.032 0.205 1.058 0.075
0.25 0.25 0.25 0.156 0.114 1.034 0.071 0.086 1.019 0.071
0.40 0.167 0.195 1.045 0.076 0.141 1.038 0.076
0.60 0.183 0.321 1.061 0.084 0.221 1.074 0.084
0.40 0.25 0.25 0.255 0.125 1.049 0.117 0.091 1.024 0.078
0.40 0.274 0.218 1.062 0.125 0.150 1.047 0.084
0.60 0.304 0.358 1.082 0.139 0.237 1.091 0.093
1.8 0.10 0.25 0.25 0.064 0.107 1.021 0.026 0.074 1.013 0.060
0.40 0.068 0.181 1.079 0.027 0.120 1.026 0.063
0.60 0.073 0.293 1.041 0.029 0.185 1.050 0.068
0.25 0.25 0.25 0.165 0.119 1.036 0.066 0.078 1.017 0.066
0.40 0.175 0.202 1.046 0.070 0.128 1.034 0.070
0.60 0.190 0.329 1.062 0.076 0.199 1.065 0.076
0.40 0.25 0.25 0.269 0.131 1.053 0.108 0.083 1.022 0.073
0.40 0.288 0.224 1.065 0.115 0.137 1.043 0.078
0.60 0.316 0.369 1.084 0.127 0.215 1.081 0.085
2.0 0.10 0.25 0.25 0.067 0.110 1.021 0.024 0.067 1.012 0.055
0.40 0.071 0.185 1.079 0.025 0.109 1.023 0.058
0.60 0.076 0.298 1.040 0.027 0.168 1.044 0.062
0.25 0.25 0.25 0.172 0.123 1.038 0.061 0.072 1.016 0.061
0.40 0.182 0.207 1.048 0.065 0.117 1.031 0.065
0.60 0.196 0.336 1.062 0.070 0.182 1.058 0.070
0.40 0.25 0.25 0.282 0.136 1.057 0.101 0.076 1.021 0.068
0.40 0.299 0.231 1.068 0.107 0.125 1.039 0.072
0.60 0.326 0.377 1.086 0.116 0.197 1.073 0.079

(参考文献 (公社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

6.5 直射照明率の求め方

照明率の算出に必要な直射照明率(U10U40U20U30U40)は、器具の取付角度と灯具の直射照明率曲線の値を基に算出します。トンネル断面と取付角度が図2.12、灯具の直射照明率曲線が図2.13の場合、以下のように求めます。

図2.12 トンネル断面例

図2.13 直射照明率曲線

(参考文献 (一社)建設電気技術協会:電気通信施設設計要領・同解説(電気編)(2017))

天井面
U10=U(90.0)U(β1)
壁面(器具側)
U20=U(90.0)U(β5)
壁面(器具と反対側)
U30=U(β1)U(β2)
全路面
U40=U(β2)+U(β5)
車道幅員
U40=U(β3)+U(β4)
壁面(器具側計算範囲)
U20=U(β7)U(β5)
壁面(器具と反対側計算範囲)
U30=U(β6)U(β2)

(7)灯具間隔(路面輝度)の計算

灯具の設置間隔(路面輝度)は、式-9を用いて求めます。

S=FUMNLr1WK (式-9)

ここで

Lr1
平均路面輝度(基準値) cd/m²
F
灯具光束 ℓm
U
車道幅員の照明率
M
保守率
N
配列係数(千鳥配列、片側配列 中央配列N=1 向合せ配列N=2)
S
器具間隔 m
W
車道幅員 m
K
平均照度換算係数 ℓx・cd⁻¹・m²
(対称照明方式かつ路面舗装がアスファルトの場合:18 コンクリートの場合:13)

(8)輝度均斉度の計算

8.1 総合均斉度

総合均斉度Uoは式-10にて求めます。

Uo=LminLr2 (式-10)

ここで

Lmin
最小部分輝度 cd/m²
Lr2
平均路面輝度 cd/m² (逐点法による)

図2.14 輝度計算の計算点の例

総合均斉度Uoの算出に必要な路面輝度の計算は、JIS Z 9111:2022に基づき図2.14の計算点に対して行います。灯具の配列が千鳥配列の場合は、2スパンに対して計算を行う必要があります。 視点位置は車線中央の高さ1.5m、かつ計算範囲の手前60mからとします。道路横断方向に対しては、車線ごとにW/5間隔(W=3.5mの場合0.7m)で5点の計算点を設けます。また、道路縦断方向に対しては、手前側の灯具と同じ位置から、灯具間隔Sの1/10間隔で10点の計算点をとります。ただし、計算点の間隔が5mを超える場合は計算点を増やして5m以内となるように設定します。

なお、複数車線の総合均斉度Uoは、隣り合う2車線を対象に算出するのがよいとされています。

8.2 車線軸均斉度

車線軸均斉度Uは式-11にて求めます。

U=Lmin()Lmax() (式-11)

ここに

Lmin()
車線中心線上の最小部分輝度 cd/m²
Lmax()
車線中心線上の最大部分輝度 cd/m²

図2.15 輝度計算の計算点の例

車線軸均斉度の算出に必要な路面輝度の計算は、JIS Z 9111に基づき、図2.15の計算点(全10か所)に対して行います。照明器具の配列が千鳥配列の場合は2スパンで計算を行うため計算点は20点となります。視点位置は計算範囲の手前60mの車線中央、高さ1.5mとします。道路横断方向に対しては車線中央1点の計算点を設けます。また、道路縦断方向に対しては、手前側の灯具と同じ位置から、灯具間隔Sの1/10間隔で10点の計算点をとります。ただし、計算点の間隔が5mを超える場合は、計算点を増やして間隔が5m以内になるよう調整します。また交通方式に関わらず全ての車線を対象に計算します。

(9)相対閾値増加TIの計算

相対閾値増加TIは式-12、式-13にて求めます。

Lr5 cd/m²の場合 TI=65LvLr30.8 % (式-12)

Lr>5 cd/m²の場合 TI=95LvLr31.05 % (式-13)

ここに

Lr3
平均路面輝度の計算値(初期点灯時) cd/m²
Lv
運転者の視野内の照明器具による等価光幕輝度 cd/m²

図2.16 等価光幕輝度の概念図

等価光幕輝度は、眼球内散乱の程度を表し、図2.16に示すように、グレア源による視線と垂直な面における照度と、視線とグレア源とのなす角度によって決まります。等価光幕輝度Lvは、照度が高く、グレア源が視線の方向に近いほど高くなります。

(参考文献 (公社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

視点位置の高さ1.5mからの視線と注視点の位置関係。立面図では視点は非グレアゾーン(車のルーフによる遮光)にあり、視点と注視点を結ぶ線が路面となす角度が1°となる注視点の位置は86.0m前方、グレア源と視線のなす角度は19°。平面図では視線位置と注視点それぞれ1/10S間隔の10点を示す。

図2.17 視機能低下グレアを計算する視点の位置

等価光幕輝度の計算範囲は、千鳥配列の場合2S(2スパン)とし、それ以外の配列の場合は灯具間隔S(1スパン)とします。計算点は図2.17のように視点の位置を基点として、灯具間隔Sの1/10間隔で10点の計算点をとります。ただし、計算点の間隔が5mを超える場合は計算点を増やして5m以内にします。

全ての計算点のうち、等価光幕輝度が最大となる位置のTI値を式-12、式-13にて求めます。

(2025年4月25日入稿)

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