ライティング講座(照明講座)

照明計画資料

道路照明 - 道路照明設計(連続照明)

(1)道路照明設計の手順

連続照明の設計は、図1.5に示す手順で行います。

図1.5 道路照明(連続)の設計手順

(2)基準値の決定

道路照明の設計を行うにあたり、まず基準値を設定する必要があります。基準値は「道路照明施設設置基準・同解説」に記載されており、以下に示す4つの基準値が定められています。

  • 平均路面輝度
  • 総合均斉度
  • 車線軸均斉度
  • 視機能低下グレア(TI値)

2.1 路面輝度

路面輝度の基準値は、表1.1のように定められています。

表1.1 平均路面輝度

単位(cd/m²)

  外部条件
A B C
道路分類 高速自動車国道等 1.0 1.0 0.7
- 0.7 0.5
一般国道等 主要幹線
道路
1.0 0.7 0.5
0.7 0.5 -
幹線・補助幹線
道路
0.7 0.5 0.5
0.5 - -
  • 外部条件A:道路交通に影響を及ぼす光が連続的にある道路沿道の状態をいう。
  • 外部条件B:道路交通に影響を及ぼす光が断続的にある道路沿道の状態をいう。
  • 外部条件C:道路交通に影響を及ぼす光がほとんどない道路沿道の状態をいう。

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

平均路面輝度は、道路分類及び外部条件に応じて、表1.1の上段の値を標準としますが、状況に応じて(設計速度が低く、交通量も少ない時など)表1.1の下段の値をとることができます。
また、特に重要な道路、またはその他特別の状況にある道路においては、表1.1の値にかかわらず、平均路面輝度を2(cd/m²)まで増大することができます。

2.2 総合均斉度

総合均斉度は、0.4以上を原則とします。

2.3 車線軸均斉度

車線軸均斉度は表1.2の値とすることが望ましいです(推奨値)。

表1.2 車線軸均斉度
道路分類 車線軸均斉度
高速自動車国道等 0.7 以上
一般国道等 主要幹線道路 0.5 以上
幹線・補助幹線道路 -

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

2.4 視機能低下グレア

視機能低下グレアは、相対閾値増加TIを原則として表1.3の値とします。

表1.3 相対閾値増加TI

単位(%)

道路分類 相対閾値増加
高速自動車国道等 10以下
一般国道等 主要幹線道路 15以下
幹線・補助幹線道路

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

(3)光源及び灯具の選定

3.1 光源の選定

光源はLEDを標準として、以下の要件を考慮して選定します。

  • 効率が高く寿命が長いこと
  • 周囲温度の変動に対して安定していること
  • 光色と演色性が適切であること

3.2 灯具の選定

道路照明に使用される灯具は、次に示す2つのタイプに分類することができます。

3.2.1 カットオフ

水平に近い光を極力カットした配光になっており、運転者にまぶしさを与えない器具です。このような配光の器具は、道路交通に影響を及ぼすような光の無い道路(周囲が暗い道路)で使用するのに適しています。

図1.6 カットオフ形の配光図

3.2.2 セミカットオフ

水平に近い光を抑え、運転者のまぶしさを少なくしつつ、縦断方向への光の延びも考慮している配光です。カットオフ器具より照明間隔を広くしても均斉度の低下をカバーできる配光です。しかし、光が周囲に広がるため、光害の原因となる可能性が有ります。

図1.7 セミカットオフ形の配光図

3.3 光源及び灯具の例

道路照明に用いられる光源と灯具の例を以下に示します。

LED道路照明

LEDモジュール

カットオフ照明器具

HID道路照明

セラミックメタルハライドランプ

セミカットオフ照明器具

高圧ナトリウムランプ

セミカットオフ照明器具
(後方カット型)

(4)配置の決定

4.1 照明方式

道路照明方式には、ポール照明方式、高欄照明方式、構造物取付照明方式、ハイマスト照明方式があり、目的や場所に応じて使い分ける必要があります(表1.4参照)。ポール照明方式を採用することがほとんどですが、最近は高欄照明方式を採用する場合も増えてきています。

表1.4 照明方式の比較
項目 ポール照明 高欄照明 構造物取付照明 ハイマスト照明
照明方式 地上8~12mのポールの先端に照明器具を取付け照明にするもので広く使用されている方式 ポール照明方式が採用できない所で高欄に低ワットの灯具を取付けて道路を照明する方式 道路上又は道路側方に設置されている構造物に直接照明器具を取付けて照明する方式 照明塔などによる高所からの照明で、通常地上高20~40m程度の照明塔に大容量の光源を多数取付けて照明する方式
照明器具が地上に下りてくるようにした昇降装置付もある
長所
  • ポールの連立により誘導性がある
  • 比較的経済的である
  • 誘導性が良い
  • 昼間の景観が良い
  • ポールなどの支持物が不要であり、建設費が安価となる場合がある
  • 昼間の景観が良い
  • ポールの本数が少なく、スッキリとした景観になる
  • シンボルとして利用できる
短所
  • 保守作業の場合、道路を規制する必要がある
  • 幅の広い道路では均斉度が悪い
  • 取付け高さが低くグレアの生ずる可能性が大きい
  • 取付位置や照明器具の選定に制限がある
  • 取付け高さが低く、グレアの生じる可能性が大きい
  • 誘導性に欠ける
  • 施設外に光がもれる
用途 インターチェンジ
パーキングエリアのランプウエイ
道路本線
空港周辺で灯具の高さに制限がある場所
ポールが設置できない場所
遮音壁のある道路
トラス橋
インターチェンジ
パーキングエリア
料金所広場

4.2 灯具の配列

道路照明の灯具の配列には、片側配列、千鳥配列及び向き合せ配列があります。各配列の特徴を以下に示します。

図1.8 道路照明の配列

  • 片側配列
    曲線道路または市街地道路ならびに中央分離帯のある道路に用います。
  • 千鳥配列
    直線道路では良好ですが曲線道路では誘導性が悪く、路面輝度の均一性が低下します。
  • 向き合せ配列
    直線道路ならびに広い曲線道路に適し、誘導性は良好です。

4.3 灯具の取付高さ

取付高さは、現在多く使用されている8m、10m及び12mの3種類が標準となります。ただし、光学特性の基準値を満足する場合はこの限りではなく、樹木や、構造物により設置高さに制約がある場合などもこれに準ずるものとします。

4.4 オーバーハング

路面が濡れているときでも照明効果があまり悪くならないようにするには、路面上に点在する水の膜による輝度分布を考慮してオーバーハングを検討する必要があります。灯具の横方向に配光のピークがある灯具では、オーバーハングを0とすることが望ましいとされていましたが、灯具の横方向よりもやや前方に配光のピークがある灯具では、その配光特性により湿った路面においても、灯具の横方向に配光のピークがある灯具よりも良好な光学特性が得られます。このため、オーバーハングは図1.9、図1.10に示す配光の種別により選定するとよいでしょう。

図1.9 横方向に配光のピークがある灯具

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

図1.10 横方向よりもやや前方に配光のピークがある灯具

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

(5)保守率の決定

光源の光束の低下、灯具の汚れなどによって路面輝度・照度が設置当初の値より減少します。この減少の程度を設計時点で見込む係数が保守率です。
この減少の程度は、道路構造、交通状況はもとより光源の交換時間と交換方式、灯具の清掃頻度などによって異なります。
道路照明の設計に用いる保守率は、0.7を標準として、道路構造や交通状況に応じて±0.05の範囲で選択できます。

表1.5 保守率の推奨値
区分 保守率
連続(局部)照明 0.65~0.75

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

(6)車道照明率の算出方法

図1.11に示す条件での車道照明率は、式-1、式-2より求めることができます。

図1.11 車道の断面図

式-1より、灯具側の路肩と車道を含めた照明率(U₁)を求めます。

\( U_{1}= \dfrac{W_{1}}{H}= \dfrac{(W+|Oh|)}{H} \) (式-1)

式-2より、灯具側の路肩照明率(U₂)を求めます。

\( U_{2}= \dfrac{W_{2}}{H}= \dfrac{|Oh|}{H} \) (式-2)

車道照明率Uは次の通り求めます。

\( U=U_{1}-U_{2} \)

(7)灯具間隔の計算

照明灯具(路面輝度)の間隔を得るための計算は、(式-3)で行います。

\( S= \dfrac{F \cdot U \cdot M \cdot N}{Lr_{1} \cdot W \cdot K} \) (式-3)

ここに

\( Lr_{1} \)
平均路面輝度(基準値)(cd/m²)
\( F \)
灯具光束(ℓm)
\( U \)
車道照明率
\( M \)
保守率
\( N \)
配列係数(千鳥配列、片側配列N=1 向き合せ配列N=2)
\( S \)
器具間隔(m)
\( W
車道幅員(m)
\( K \)
平均照度換算係数(ℓx/cd/m²)
(路面舗装がアスファルトの場合:15 コンクリートの場合:10)

(8)輝度均斉度の計算

8.1 総合均斉度

総合均斉度Uoは式-4にて求めます。

\( Uo= \dfrac{Lmin}{Lr_{2}} \) (式-4)

ここに

\( Lmin \)
最小部分輝度(cd/m²)
\( Lr_{2} \)
平均路面輝度(cd/m²) (逐点法による)

総合均斉度算出に必要な路面輝度の計算は、CIE Pub.30.2-1982に基づき図1.12の計算点(全100箇所)に対して行います。灯具の配列が千鳥配列の場合は2スパンで計算を行うため計算点は200点となります。視点位置は車線中央の高さ1.5mとし計算範囲手前から60mとします。道路横断方向に対しては、車線ごとにW/5間隔(W=3.5mの場合0.7m)で5点の計算点を設けます。また、道路縦断方向に対しては、手前側の灯具と同じ位置から、灯具間隔Sの1/10間隔で10点の計算点をとります。ただし、計算点の間隔が5mを超える場合は計算点を増やして5m以内にします。また交通方式が一方交通の場合は、視点位置が走行車線からの計算のみとなります。

図1.12 総合均斉度の計算点

8.2 車線軸均斉度

車線軸均斉度Ulは式-5にて求めます。

\( Ul= \dfrac{Lmin(l)}{Lmax(l)} \) (式-5)

ここに

\( Lmin(l) \)
車線中心線上の最小部分輝度(cd/m²)
\( Lmax(l) \)
車線中心線上の最大部分輝度(cd/m²)

車線軸均斉度算出に必要な路面輝度の計算は、CIE Pub.30.2-1982に基づき図1.13の計算点(全10箇所)に対して行います。灯具の配列が千鳥配列の場合は2スパンで計算を行うため計算点は20点となります。視点位置は車線中央の高さ1.5mとし計算範囲手前から60mとします。道路横断方向に対しては車線中央1点の計算点を設けます。また、道路縦断方向に対しては、手前側の灯具と同じ位置から、灯具間隔Sの1/10間隔で10点の計算点をとります。ただし、計算点の間隔が5mを超える場合は計算点を増やして5m以内にします。また交通方式にかかわらず全ての車線において計算を行います。

図1.13 車線軸均斉度の計算点(視線位置:走行車線)

(9)相対閾値増加TIの計算

相対閾値増加TIは式-6、式-7にて求めます。

Lr ≦ 5 (cd/m²)の場合

\( TI=65 \cdot \dfrac{Lv}{Lr_{3}^{0.8}} \) (%) (式-6)

Lr > 5 (cd/m²)の場合

\( TI=95 \cdot \dfrac{Lv}{Lr_{3}^{1.05}} \) (%) (式-7)

ここに

\( Lr_{3} \)
平均路面輝度(cd/m²)
ただし、\( Lr_{4} \):平均路面輝度(計算値)の初期値とする。
\( Lv \)
運転者の視野内の照明器具による等価光幕輝度(cd/m²)

等価光幕輝度は、眼球内散乱の程度を表し、図1.14のようにグレア源による視線と垂直な面における照度と、視線とグレア源とのなす角度によって決まります。等価光幕輝度Lvは、照度が高く角度が小さいほど高くなります。

図1.14 等価光幕輝度の概念図

(参考文献 (社)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2007))

等価光幕輝度の計算範囲は、千鳥配列の場合2S(2スパン)とし、それ以外の配列の場合は灯具間隔S(1スパン) とします。計算点は図1.15のように視点の位置を基点として、灯具間隔Sの1/10間隔で10点の計算点をとります。ただし、計算点の間隔が5mを超える場合は計算点を増やして5m以内にします。

全ての計算点のうち、等価光幕輝度が最大となる位置のTI値を式-6、式-7にて求めます。

図1.15 相対閾値増加TI値の計算点

(2020年11月20日入稿)

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