ライティング講座(照明講座)

照明計画資料

防災照明 - 誘導灯

(1)誘導灯とは

誘導灯とは、避難を容易にするために避難口や避難方向を指示するための照明設備のことであり、普段は常用電源により点灯し、火災時等による断線や停電などの非常時には自動的に非常電源に切替わり、暗闇でも十分その効果を発揮します。
誘導灯は「消防法施行令第26条」と各地方自治体の火災予防条例などによって、劇場・旅館などの人の多く集まる場所に設置が義務づけられています。

(2)関連法規及び規格

2.1 法規

消防法(昭和23年、法律第186号)
政令
消防法施行令(昭和36年、政令第37号)
省令
消防法施行規則(昭和36年、自治省令第6号)
告示
消防庁告示
通達
消防庁通達
条例準則
火災予防条例準則(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官通達)
建基法
建築基準法(昭和25年、法律第201号)
建基政令
建築基準法施行令(昭和25年、政令第338号)

2.2 規格等

  • JIL5501(非常用照明器具技術基準)
  • JIL5502(誘導灯器具及び避難誘導システム用装置基準)
  • JIL5505(積極避難誘導システム技術基準)
  • JIL技術資料123(誘導等器具及び非常用照明器具の保守・点検方法)
  • JIL技術資料125(誘導灯器具及び避難誘導システム用装置技術基準細則)
  • JIL技術資料126(誘導灯器具及び避難誘導システム用装置試験細則)

(3)誘導灯の区分

誘導灯は、「避難口誘導灯」と「通路誘導灯」の2種類に分けられます(表11.1)。

表11.1 誘導灯の区分
用途による区分 法令区分 設定による区分 高輝度誘導灯 従来の誘導灯
避難口誘導灯
A級 A級 40形 大形(40W×2)
B級 B級BH形 20A形 特殊大形(40・35・32W×1)
B級BL形 20B形 中形(20W×1)
C級 C級 10形 小形(10W×1)
通路誘導灯
A級 A級 40形 大形(40W×2)
B級 B級BH形 20A形 特殊大形(40・35・32W×1)
B級BL形 20B形 中形(20W×1)
C級 C級 10形 小形(10W×1)

(参考文献 消防法施行令第26条、消防法施行規則第28条の3、消防予第245号(1999))

誘導灯認定証標について

図11.1 誘導灯認定証票

岩崎電気の誘導灯は、消防庁登録認定機関である(一社)日本電気協会のJEA誘導灯認定委員会の認定に合格し、図11.1に示す認定証票を貼付しています。

表11.2 誘導灯の種類(電池内蔵形)
取付場所 天井
取付方法 直付形 埋込形 直付形 吊下形 埋込形 埋込形
電池内蔵

一般形

C級 片面形 EMSJ101C EMSJ102C EMSJ101C EMSJ101C+吊具 - -
両面形 - - EMSK101C EMSK101C+吊具 - -
B級BL形 片面形 EMSJ201BL EMSJ202BL EMSJ201BL EMSJ201BL+吊具 EMSPJ201BL -
両面形 - - EMSK201BL EMSK201BL+吊具 EMSPK201BL -
B級BH形 片面形 EMSJ401BH EMSJ402BH EMSJ401BH EMSJ401BH+吊具 - -
両面形 - - EMSK401BH EMSK401BH+吊具 - -
A級 片面形 EMSJ440A - EMSJ440A EMSJ440A+吊具 - -
両面形 - - EMSK440A EMSK440A+吊具 - -
長時間定格形 C級 片面形 EMSJL101C - EMSJL101C EMSJL101C+吊具 - -
両面形 - - - - - -
B級BL形 片面形 EMSJL201BL - EMSJL201BL EMSJL201BL+吊具 - -
両面形 - - - - - -
B級BH形 片面形 EMSJL401BH - EMSJL401BH EMSJL401BH+吊具 - -
両面形 - - - - - -

防湿・防雨形

C級 片面形 EMSJR106C - EMSJR101C EMSJR101C+吊具 - -
両面形 - - EMSKR101C EMSKR101C+吊具 - -
B級BL形 片面形 EMSJR206BL - EMSJR201BL EMSJR201BL+吊具 - -
両面形 - - EMSKR201BL EMSKR201BL+吊具 - -
B級BH形 片面形 EMSJR406BH - EMSJR401BH EMSJR401BH+吊具 - -
両面形 - - EMSKR401BH EMSKR401BH+吊具 - -

避難口誘導灯

通路誘導灯

(4)誘導灯の設置基準

誘導灯の設置基準は「消防法施行規則第28条の3」により次のように定められています(表11.3、表11.4)。

表11.3 誘導灯の設置基準

(参考文献 消防法施行令第26条、消防法施行規則第28条の3、消防予第408号(2009))

  • ※1:(1)項イ、(4)項、(5)項イ、(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているものを除きます。
  • ※2:上表は消防法に規定する防火対象物を抜粋しています。(16)項イ(複合防火対象物)、(16の3)項(建築物の地階)のなかで誘導灯の設置を考える際、(5)項イ、(6)項は避難口・通路誘導灯ともにC級以上がご使用になれます。
全部
その建物のどの階にあっても設置
地階
その建物の地階部分だけに設置
11階以上
その建物の11階以上の部分だけに設置
無窓階
建築物の地上階のうち避難上または、消火活動上有効な開口部を有しない階
避難口A級 避難口B級BH形、又はB級BL形+点滅式
避難口C級以上(避難の方向を示す矢印を有するものはB級以上)
通路A級 通路B級BH形
通路C級以上
表11.4 誘導灯別の有効範囲
区分 (ア)方式 (イ)方式
表示面縦寸法h(m) 距離(m) 歩行距離:D=kh K(係数) 表示面縦寸法h(m)
避難口誘導灯 A級 避難の方向を示すシンボルのないもの 0.4 60 Dは歩行距離(m)
hは表示板の縦寸法(m)
kは区分に応じた係数
150 表示面の縦寸法は器具により異なりますので承認図より求めてください
避難の方向を示すシンボルのあるもの 40 100
B級 避難の方向を示すシンボルのないもの 0.2 30 150
避難の方向を示すシンボルのあるもの 20 100
C級 避難の方向を示すシンボルのないもの 0.1 15 150
通路誘導灯 A級 0.4 20 50
B級 0.2 15
C級 0.13 10
  • 1) 避難口誘導灯及び通路誘導灯の有効範囲は、原則として、当該誘導灯までの歩行距離が上表の中の(ア)又は(イ)に定める距離のうちいずれかの距離以下となる範囲とされていること。この場合において、いずれの方法によるかは、設置者の選択によるものであること。ただし当該誘導灯を容易に見とおすことのできない場合又は識別することができない場合にあっては、当該誘導灯までの歩行距離が10メートル以下になる範囲とする。
  • 2) ※避難口誘導灯のうちC級のものについては、避難口であることを示すシンボルについて一定の大きさを確保する観点から、避難の方向を示すシンボルの併記は認められていない(誘導灯告示、第4第1号(六)イただし書き)。

(参考文献 消防法施行令第26条、消防法施行規則第28条の3、消防予第408号(2009))

(5)誘導灯、誘導標識の取付が免除される建物

消防法施工規則第28条の2により次のように定められています。

5.1 誘導灯、誘導標識の設置を必要としない防火対象物又はその部分

5.1.1 避難口誘導灯の設置が除外される場合

居室か各部分から主要な避難口を、容易に見通し識別できる場合で、その歩行距離が下図の距離以下の時、設置は不要です。

避難口誘導灯(規則28条の2第1項関係)

図11.2 避難口誘導灯の設置が除外される場合

5.1.2 通路誘導灯の設置が除外される場合

主要な避難口を容易に見通し、かつ識別できる場合でその歩行距離が下図の時以下の場合は設置は不要です。

※階段又は傾斜路では非常灯による所要条件が揃った場合。

通路誘導灯(規則28条の2第2項関係)

図11.3 通路誘導灯の設置が除外される場合

階段又は傾斜路のうち、非常灯により避難上必要な照度が確保され、避難の方向の確認(当該階の表示等ができる場合)ができる場合、通路誘導灯は不要です。

図11.4 通路誘導灯の設置が除外される場合

廊下または通路の各部分が、避難口誘導灯の有効範囲に包有される場合、通路誘導灯は不要です。

図11.5 通路誘導灯の設置が除外される場合

5.1.3 避難口誘導灯の設置を必要としない居室の要件

規則第28条の3第3項第1号(ハ)の消防庁長官が定める居室は、室内の各部分から当該居室の出入口を容易に見通し、かつ、識別できるもので、床面積が100m²(主として防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供するものにあっては400m²)以下であるとする。

図11.6 避難口誘導灯の設置を必要としない居室の要件

図11.7 避難口誘導灯の設置が除外される例

図11.8 避難口誘導灯の設置免除の例

条件
  • 直接地上に通ずる出入り口を有する
  • 避難口を容易に見通し識別できる
  • 該当避難口に至る歩行距離30m以内
  • 蓄光式誘導標識が消防庁長官が定めるところにより設けられていること

表11.5 誘導灯、誘導標識の取付が免除される建物

※1:(1)項イ、(4)項、(5)項イ、(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているものを除きます。

※2:上表は消防法に規定する防火対象物を抜粋しています。(16)項イ(複合防火対象物)、(16の3)項(建築物の地階)の中で誘導灯の設置を考える際、(5)項イ、(6)項は避難口、通路誘導灯ともにC級以上がご使用になれます。

※3:「非常用の照明装置」により避難上必要な照度が確保されるとともに、避難の方向の確認(当該階の表示等)ができる場合には通路誘導灯の設置は不要です。

(参考文献 消防法施行規則第28条の2、平成11年消防法告示第2号消防予第245号(1999))

(6)避難口誘導灯の設置

避難口誘導灯は、下記(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の避難口の上部またはその直近の避難上有効な箇所に設けます(表11.6)。

表11.6 避難口誘導灯の設置条件

(イ)屋内から直接地上へ通ずる出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)

(ロ)直通階段の出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)

(ハ)(イ)又は(ロ)に掲げる避難口に通ずる廊下、又は通路に通ずる出入口
(室内の各部分から容易に避難することができるものとして消防庁長官が定める居室の出入口を除く)

(ニ)(イ)又は(ロ)に掲げる避難口に通ずる廊下、又は通路に設ける防火戸で直接手で開くことができるもの(くぐり戸付き防火シャッターを含む)がある場所
(自動火災報知設備の感知器の作動と連動して閉鎖する防火戸に誘導標識が設けられ、かつ、当該誘導標識を識別することができる照度が確保されるように非常照明が設けられている場合を除く)

(参考文献 消防法施行規則28条の3(1999))

(7)通路誘導灯の設置

通路誘導灯は、下記(イ)(ロ)(ハ)(ニ)に設けます(表11.7)。

表11.7 通路誘導灯の設置条件

(イ)曲がり角
曲がり角があれば曲がり角に通路誘導灯を設ける。

(ロ)主要な避難口
前項(イ)(ロ)に設ける避難口誘導灯の有効範囲内の箇所に、通路誘導灯を設ける。

(ハ)廊下又は通路の各部分を通路誘導灯の有効範囲内に包含するように通路誘導灯を設ける。

(ニ)通路誘導灯間の配置

(参考文献 消防法施行規則28条の3、消防予245号(1999))

(8)誘導灯の消灯(消防法施行規則第28条の3、平成11年消防法告示第2号消防予第245号(1999)

当該防火対象物が無人である場合、以下に挙げる場所に設置する場合であって、自動火災報知設備の作動と連動して点灯し、かつ、当該場所の利用形態に応じて点灯するように措置されているときは消灯可能です。

  • 外光により避難口又は避難の方向が識別できる場所
  • 利用形態により特に暗さが必要とされる場所(遊園地のアトラクション、劇場、映画館、プラネタリウム)
  • 主として当該防火対象物の関係者に雇用されている者の使用に供する場所

8.1 誘導灯を消灯させる場合のシステム例

図11.9 消灯させる場合の基本配線図

図11.10に示すように4つの方法があります。

図11.10 消灯させる場合の方法

(9)点滅・音声付加点滅誘導灯の設置

誘導灯に設ける点滅機能又は音声誘導機能は、以下に定めるものとします。

  • 表11.8(イ)又は(ロ)に掲げる避難口に設置する避難口誘導灯以外の誘導灯に設けてはならない
  • 自動火災報知設備の感知器と連動して起動すること
  • 避難口から避難する方向に設けられている火災報知設備の感知器が作動したときは、当該避難口に設けられた誘導灯の点滅及び音声誘導が停止すること
  • 音声警報装置付の非常放送設備と併せて使用する際の誘導音装置付誘導灯の音圧レベルは、当該装置の中心から1m離れた位置で70dBに調整されていること
表11.8 点滅・音声付加点滅誘導灯の設置

(イ)屋内から直接地上へ通ずる出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)

(ロ)直通階段の出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)

(参考文献 消防法施行規則第28条の3、平成11年消防法告示第2号消防予第245号(1999))

9.1 点滅・音声付加点滅誘導灯のシステム例

図11.11 誘導音+点滅を全館一斉動作させる場合の基本結線図

9.2.誘導灯用信号装置

誘導灯用信号装置は点滅形音声誘導灯、点滅形誘導灯、減光誘導灯の誘導音、点滅、減光の動作を行う場合や誘導灯を消灯させる場合に自動火災報知設備と連動して誘導灯を制御する装置です。機能に応じて2タイプの信号装置があります(表11.9)。

表11.9 種類と機能一覧
品種形式/機能 点滅・消灯用(1回路)MS15 誘導音・点滅用(1回路)MS16A
特長 誘導灯への配線を3線引で消灯させることができ、既設の配線でも配線替え(2線→3線)が可能な場合、この信号装置を使用すると機器設備費が低減されます。自動火災報知器からの信号を中継し、火災時には誘導灯を一括点灯させる信号を出します。手動スイッチによる消灯信号のほか、施錠(照明)連動スイッチ、フォトスイッチ(光電式自動点滅器)とを連動させた自動による消灯信号が出せます。点滅形と組合せて使用することも可能です。 自動火災報知受信機から得た火災信号により、全館の誘導音と点滅を一斉に同時動作させます。また、非常放送が入った場合、自動的に誘導音を停止させる機能を付加しております。誘導音付加点滅形誘導灯と組合せて、一般誘導灯を手動、施錠、照明、外光との連動により消灯、点灯させる際にも利用できる多機能形です。

動作 信号出力 動作 信号出力
消灯 手動 AC100V AC100V
施錠 AC100V AC100V
照明 AC100V AC100V
外光 AC100V - -
減光 AC100V - -
点滅 AC100V -
誘導音+点滅 停電補償 - - DC24V
非常放送連動 - - DC24V
鳴動区分 - - 一斉鳴動 -
移報入力表示 - -
復帰お知らせ - -
出力表示 - -

※ 点滅信号入力がDC24Vに対応した点滅形誘導灯に限り使用可能です。

(10)長時間(60分)形誘導灯の設置

防火対象物のうち(1)から(4)のいずれかに該当する場合で下図(イ)及び(ロ)に掲げる避難口、避難階の(イ)に通ずる廊下及び通路並びに直通階段に設けるものにあっては、非常電源の容量を60分とします。(20分を超える時間における作動に係る容量にあっては、自家発電によるものを含みます)

  1. 延べ面積5万平方メートル以上
  2. 地階を除く階数が15以上であり、かつ、延べ面積3万平方メートル以上
  3. 地下街で延べ面積1000平方メートル以上
  4. 地下駅及び地下駅に通じる階段、傾斜路及び通路のうち消防長又は消防署長が避難上必要があると認めて指定したもの
表11.10 長時間(60分)形誘導灯の設置
(イ)屋内から直接地上へ通ずる出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)
(ロ)直通階段の出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)

(参考文献 消防法施行規則第28条の3、平成11年消防法告示第2号消防予第408号(2009))

(11)誘導灯の配線方法

11.1 電池内蔵形の場合

電池内蔵形誘導灯の配線工事は、電気工作物にかかわる法令によって工事するほか次に従ってください(電池内蔵形のため、耐火規制は受けません)。ただし、誘導灯を消灯する場合や減光する場合の配線は、下図によって工事をしてください。

  • 誘導灯を一般用電気配線に接続しないでください。
  • 分電盤からの直接回路とし、途中に一般の人が容易に開閉できるようなスイッチを設けないでください。

図11.12 誘導灯の配線方法(2線式配線-常時点灯)

  • 消防法では、2線式が原則となっていますので、この配線方法で結線してください。
  • 口出線の赤と黒を一括し、白と赤・黒間に電源を印加してください。

図11.13 誘導灯の配線方法(3線式配線-平常時消灯・非常時点灯)

  • 採用する場合は、所轄の消防庁(署)の指導を受けてください。
  • 口出線の白と黒間に電源を印加し、黒と赤間にスイッチを入れてください。
  • 絶対にしてはいけない結線
    3線配線方式の場合、機器を損傷するおそれがありますから、図11.14のような結線は行なわないでください。

図11.14 誘導灯で行ってはいけない結線

(2022年5月18日入稿)

このページに掲載されている情報は、原稿執筆時現在の情報です。ご覧になった時点では、最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。