技術資料

UV-LED面光源装置 LHUVシリーズ - LHUV36 -

光応用部 光応用開発課

キーワード

LED,UV,面光源,光フィードバック,365nm,樹脂硬化,画像処理

1.はじめに

LED(Light Emitting Diode)は,1960年代後半に赤色の商品化が始まり,現在では近紫外から近赤外までのものが商品化されている。

年を追うごとに,光源にLEDを用いた光源装置の要望が多くなっており,当社としては,すでに白色及び赤色のライン・面光源装置を商品化しているが品種拡大のため,近紫外線面光源装置の開発を行った。近紫外線面光源装置の用途は,樹脂硬化・インク乾燥・画像処理(ガラス及び金属の表面キズ検査等)・蛍光体励起・ブラックライトの代替等である。

2.商品概要

2.1 外形・仕様

ピーク発光波長365nm,約3WタイプのLEDを36個使用したもので,外観を図1に外形寸法を図2に示す。また,製品概略仕様を表1に照射分布特性を図3,分光分布特性を図4に記す。

図1 UV-LED 面光源装置UVLH36外観写真

図2 UV-LED 面光源装置UVLH36外形寸法

図3 照射分布特性(照射距離300mm)

図4 分光分布特性

表1 概略仕様
入力電圧 DC24V+10%
消費電力 約100W
動作温度範囲 0~40℃
外形寸法 310mm×143mm×90mm
重量 約3.5kg
ピーク発光波長 365nm
有効照射エリア 200mm×100mm
放射照度 28mW/cm² 14mW/cm²
(WD=100mm) (WD=400mm)
駆動方式 定光出力制御(安定度0.2%/℃)
制御方式 ON-OFF制御(0-5V),RS232C

2.2 構造

概略内部断面構造を図5に示す。LEDはアルミ基板に実装され,LEDの放射面側にはアルミ蒸着を施した反射鏡を,背面側にはヒートシンクとLED制御回路を配置している。また,側面には排気ファンを設置し,LED及びLED制御回路から発した熱を効率良く放出する構造とした。

LED制御回路には,LEDのデメリットである温度上昇(自己発熱,周囲温度変化)による光出力低下を補う機能として,図6に示す定光出力制御(光フィードバック)システムを搭載した。定光出力制御システムは,LEDの光出力を一定にするために,LEDが発した光の一部を光センサにて受光し,電気信号に変換し,基準信号(光出力設定値)と随時比較し,LEDの入力電流を可変するものである。また,このシステムの採用により寿命末期まで設定した光出力を一定に保つことを可能にした。

図5 概略内部断面構造

図6 LED制御回路構成

3.特長・機能

3.1 光制御

図7は,光学シミュレーション結果の照射分布特性である。LEDから発する光の利用効率を高めるため,光学シミュレーションにより反射鏡形状の検討を行い,照射距離100mm~400mmまでの照射エリアに対応可能な双曲線反射鏡を採用した。

図7 LED光学シミュレーションによる照射分布特性

3.2 放熱

LEDの寿命はジャンクション温度で大きく変化する。今回の商品は光出力を30000時間一定に保つ仕様とするため,熱シミュレーションにより放熱構造の検討を行い(図8),空気の風量・流れを検証し,LEDのジャンクション温度50℃(Ta=25℃)付近に収まるように,ファンとヒートシンクを組み合わせ,ファンによる装置内空気の強制排気の流路にヒートシンクを配置する空冷方式を選択した。

図8 熱シミュレーションに用いた3Dモデル

3.3 光出力安定化

光出力安定化のために,LED制御回路は各制御ユニットにマイコンを搭載し,種々のソフトウエア対応する際の点灯制御の自由度を大きくした。また,光源ユニットには光フィードバックに使用する受光センサを搭載した。受光センサは,外光による誤動作防止を検討した結果,

  1. 素子材料としては,LEDの発光波長(365nm)以外を検出しないデバイスを候補に挙げたが非常に高価であり出力も低いため,今回は一般的なSiフォトダイオードを採用することとし,
  2. センサ取付け位置に関しては,外光の影響を受けないようにLEDの反射鏡の一部に凹状のスペースを設け収納し,LEDが発した光のみ受光する位置に配置した(特許出願済)。

図9は,本開発商品の経過時間に対する放射強度及びLED入力電流の測定結果である。LEDは経過時間と共に自己発熱の影響で放射強度が低下するが,光フィードバックを採用したことにより,LEDの入力電流をコントロールし,放射強度を常に一定に保つことが可能になった。

図9 放射照度安定度(Ta=25℃)

4.おわりに

本開発ではピーク発光波長365nmの面光源装置の商品化を行ったが,用途によってはこの装置の光出力ではまだ十分ではなく,高出力化が今後の課題である。

更なる品種拡大として,反射鏡・放熱構造等に検討を加えて光の利用効率向上を図ると共に,ピーク発光波長385nm・395nm・405nmの機種とライン光源装置の商品化をする予定である。また,光源装置のコストダウンを図るため,光源ユニットの標準化も進める予定である。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第24号掲載記事に基づいて作成しました。
(2011年5月20日入稿)


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