施設報告

無接点昇降式照明灯(試験施工) - 福岡497号今宿道路東地区外道路照明設置工事 -

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キーワード

福岡497号今宿道路,無接点昇降式照明灯,安心・安全,環境配慮,交通規制,省力化,簡易操作,事故防止,安全走行

1. はじめに

従来の道路照明器具(ポール先端に取付け)のランプ交換や器具清掃などのメンテナンスを行うには,高所作業車が必要なため,道路占有を所轄警察へ事前申請し,許可を得た上で車線規制を実施して車道上で作業を行っている。しかし,無接点昇降式照明灯(以下,本照明灯と言う)は,昇降装置の可動部に取り付けられた照明器具を水平方向に回転させながら下降させ,地上2mで照明器具が歩道側で停止する機能を有するものである。

従って,作業者が一人でしかも歩道内で,下降操作とメンテナンスを行うことが可能となり,車線規制の必要がなく安全にそして,安心して作業に従事できることになる。車線規制の必要がないので渋滞や騒音を軽減でき,CO₂削減にも寄与することとなり,環境にも配慮され,国の施策である「安心・安全・環境」に対応した照明灯である。

福岡497号今宿バイパス(福岡市郊外,唐津方面)において,照明灯2基について本照明灯が試験施工として採用され,2005年3月末に完成したので概要を紹介する。

2. 施設概要

照明器具は標準仕様の高効率形道路照明器具のPAZU®(H7706),ランプは高圧ナトリウム180W(NHT180LS)を採用している。照明での一般的な昇降器具は,ランプに電源供給する為の電気的な接点を有しているが,本照明灯では,ランプと安定器との接続ケーブルをポール開口部にて接続し,昇降部の昇降に連動してケーブルも可動する構造とした無接点昇降式を採用した。その外観形状を図1に,昼間および夜間の設置状況を図2,図3に示す。

2基の照明灯は橋梁の両端部に建柱され,施工時の照明器具とランプについては,可動部を下降させ地上での取り付けを行った(図4)。今後は清掃などのメンテナンスに関しては,本照明灯の最大の特徴である車線規制を行うことなく,ウインチを取り付けその操作で照明器具の昇降を行う事により,作業者の安全が確保される上,ランニングコストの低減も可能となる。(図5)

図2 設置状況(昼間)

図3 設置状況(夜間)

図4 メンテナンス作業

図5 昇降作業

3. 機器構成

本照明灯の昇降機能に関しては,昇降装置(固定部・可動部),ウインチ,ポール内ワイヤー,防水コネクタ付ケーブル,専用ポールから構成される。

3.1 昇降装置

昇降装置は,ポール先端に取り付けて固定される固定部とSUS製ワイヤーによりガイドレールに沿って回転昇降する可動部から成る。回転角度は標準を90°とした。

(1)固定部(図6)

図6 昇降装置の固定部(下方より見上げる)

可動部を収納するための防雨仕様の円筒形カバー内には,無接点機能のため安定器からランプまでの配線ケーブルを受け,昇降させる滑車が中央部に固定されている。天井面には,安全のためのロック機能が2組装着され,常時は可動部がロック状態にあり,メンテナンスの昇降時には,ウインチ操作によってロック状態を解除できる。

固定部全体は,ポール先端部に固定して取り付けるため,一体化されたアダプターをポール内に挿入して2本のボルトで固定している。

(2)可動部(図7)

図7 昇降装置の可動部

円筒形の可動部には,照明器具を取り付けるアームを外面に設け,その対面に回転昇降のためのガイドレールに対応したSUS製滑車が1組固定されている。昇降を円滑に安定して行うための補助滑車(ポール接触面は樹脂製)が,ポールを取り巻く4ヶ所で固定している。また,固定部のロック装置に対応した2組の装置でSUS製ポール内ワイヤーを固定している。

3.2 ウインチ

ウインチは,ポール内の結露対策や使用頻度,コストなどを勘案して,メンテナンス時のみ装着することとした為,取付板と一体化した着脱方式のウインチとした。

ポールの高さに必要な長さ(11m)のSUS製ウインチ側ワイヤー(ø4)を巻き込み,ワイヤーの先端には,ポール内ワイヤーとの接続を可能にするために,SUS製のリングキャッチが取り付けられている。ウインチの外観と仕様を表1に示す。また,操作中にウインチから手を離してもウインチが回転しない機構を採用している。

表1 ウインチの外観と仕様
外観 仕様
外観 最大巻取能力 30kg
ワイヤ収納量 15m(ø5)
ハンドル長さ 205mm
重量 重量3.6kg(取付板含)
ブレーキ機能 メカニカル自動
ブレーキ内蔵

3.3 ポール内ワイヤー

SUS製ポール内ワイヤー(ø3)は,2組のロック装置に常に均一に張力がかかるように,またウインチ側ワイヤーとの接続用のために,滑車が組み込まれたSUS製豆ブロックに通している。豆ブロックの連結金具であるワイヤクリップはポール内ワイヤーを固定しているので,操作中にポール内ワイヤーが切れた場合でも,照明器具が落下しない構造となっている。

3.4 防水コネクタ付ケーブル

無接点機能を有するために,開口部内で作業者がポール内ケーブル(安定器~ランプ)を容易に分離して,ポール内ワイヤーに添加させ昇降する機構とした。ケーブルには,低温時に外装が硬化して昇降時の障害にならないように,特に低温時の柔軟性に富んだ,かつ耐熱,耐震性に優れた移動機器用のケーブル(VCT531X)を採用した。その分離部分には,防水仕様のコネクタが開口部内上部に設けられ,ソケット側が固定されている。

3.5 専用ポール

照明ポールは昇降機能を持つことから昇降専用ポールとし,形状は段付ストレート(ベース付)で,上段ポール(ø139.8×8m)には回転をするためのガイドレール(ø15鋼)が溶接されている。下段ポール(ø216.3×2m)は,開口部を設けウインチなど関連機器が収納可能な取り付け板を内蔵している。特に段付き部分は,従来の溶接加工ではなく回転圧延(スピニング)加工によって,スマートな形状と強度の向上が図られている。仕上げは耐食性を考慮して,溶融亜鉛メッキ仕上げとした。

ポール内の結露対策と開口部内の機器配置に余裕をもたせ,ウインチの収納スペースとワイヤー相互の連結など,作業者が簡単に作業出来るように小形で絶縁性能の高いジョイントユニット(EFET-15A)を収納した。


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