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スポーツ照明

計画の手順

スポーツ施設の照明は、机上の視作業のための平面的な照明ではなく、競技空間の照明であり、競技者が動きながら動いている視対象物を見て、瞬時に正確な判断が下せるようにすることが要求されます。このため、照明設計では、競技種目によって異なる視対象物の大きさ、動き、競技範囲等を十分に把握し、競技面、競技空間および背景に適切な明るさを配分するとともに、競技者等の視線方向を考慮して競技に集中できるような視環境を作ることが要求されます。

(1)照度

照度は、一般に競技面上の水平面照度で推奨されますが、スポーツ照明においては、競技者等の通常視線が水平に近いことから鉛直面照度や半円筒面照度が重要になります。しかし、空間の照度は、任意の1点でさえ東西南北のような方向によりその値が異なるので、照明計算が複雑になり実用的ではありません。このため、計算や測定が容易で規定しやすい水平面照度が用いられます。

スポーツ照明の所要照度は、表4.1に示すように照度値を規定している団体があります。またJIS照度基準(JIS Z 9110)で表4.2のように、競技種目と競技レベルに応じた照度範囲を推奨しています。
ただし、表4.3に示す競技種目については、JIS Z 9120〜JIS Z 9124で別途照度基準が推奨されています。

表4.1 競技団体の照度基準

競技種目 競技団体名 競技団体による照度基準
屋外テニス 日本テニス協会 競技面上1(m)で500(ℓx)以上。
野球 日本野球連盟 基準なし。
陸上競技 日本陸上競技連盟 第一種公認陸上競技場:平均1000(ℓx)程度、フィニッシュラインは、1500(ℓx)以上。
サッカー 日本サッカー協会 フィールド内平均照度1500(ℓx)以上(ただし、全国大会、地域レベルの大会でテレビ撮影を行う場合は、1000(ℓx)以上。
市町村レベルの大会では、フィールド内平均照度700(ℓx)以上)。
ラグビー 日本ラグビーフットボール協会 基準無し。
体操 日本体操協会 国際大会:室内温度20℃において最低1500(ℓx)以上。選手の目から見て眩しくないこと。
屋内テニス 日本テニス協会 基準無し。
卓球 日本卓球協会 国際大会:台上1000(ℓx)以上、プレー領域500(ℓx)以上、
その他の大会:台上600(ℓx)以上、プレー領域400(ℓx)以上。
バドミントン 日本バドミントン協会 国内、国際大会:ネットの中央線上(1.524m)で1200(ℓx)以上。
バスケットボール 日本バスケットボール協会 国体の場合、700(ℓx)以上確保するように指導している。学校体育館の場合は、規定していない。公式大会は床上1.5mで1500(ℓx)以上、補助照明なしでTV放映可能なものとする。
バレーボール 日本バレーボール協会 FIBA世界大会1000〜1500(ℓx)。V.LEAGE1500(ℓx)以上。
ハンドボール 日本ハンドボール協会 国際、公式競技800(ℓx)以上(天井高さ7m以上)。
柔道 全日本柔道連盟 基準なし。
剣道 全日本剣道連盟 基準なし。
相撲 日本相撲連盟 基準なし。
アマチュアレスリング 日本アマチュアレスリング連盟 基準なし。
アマチュアボクシング 日本アマチュアボクシング連盟 国際大会時:リング上1500〜1600(ℓx)以上。
水泳プール 日本水泳連盟 公式競技プール:端壁付近の内側で600(ℓx)以上、
国際基準水泳プール:プール前面で1500(ℓx)以上。
フィギュアスケート 日本スケート連盟 基準なし。
アイスホッケー 日本アイスホッケー連盟 基準なし。
スピードスケート 日本スケート連盟 国際スケート連盟:最低1200(ℓx)以上。
ソフトボール 日本ソフトボール連盟 国体開催時:内野900(ℓx)、外野600(ℓx)。
ゲートボール 日本ゲートボール連盟 公式競技:300〜500(ℓx)、一般競技:150〜300(ℓx)以上、レクリエーション:75〜150(ℓx)。

表4.2 照度基準

  • ※表の照度は維持照度を表しており、使用期間中は下回ってはいけない値。

(参考文献:JIS Z 9110 2010 財) 日本規格協会)

表4.3 スポーツ照明の照度基準

項目 照明範囲(競技種目) 準拠規格
3.4.3 テニスコート照明 屋外テニスコートおよび屋外野球場の照明基準
(JIS Z 9120)
3.4.4 野球場照明
(ソフトボール場照明)
3.4.5 陸上競技場照明
サッカー場照明
ラグビー場照明
屋外陸上競技場、屋外サッカー場および
ラグビー場の照明基準
(JIS Z 9121)
3.4.6 屋内運動場照明 屋内運動場の照明基準(JIS Z 9122)
3.4.7 水泳プール照明 水泳プールの照明基準(JIS Z 9123)
3.4.8 スキー場照明 スキー場およびアイススケート場の照明基準(JIS Z 9124)
3.4.9 アイススケート場照明

(2)照度均斉度

競技者の視線は、動作にしたがって常に動いているので、照度分布にムラがあり明暗の差が大きいと、目は常に明暗順応を繰り返さなければならず、見え方の低下や疲労の原因となります。競技面における照度均斉度の目安値を表4.4に示します。

表4.4 照度均斉度の目安値(水平面照度)

競技区分 施設
屋外運動場(Min/Ave) 屋内運動場(Min/Ave)
公式競技 0.50以上 0.5〜0.65以上
0.4〜0.50以上
一般競技
レクリエーション 0.4以上 0.25〜0.40以上

(参考文献:JIS Z 9120、JIS Z 9121、JIS Z 9122、JIS Z 9123、JIS Z 9124 財) 日本規格協会)

(3)背景の明るさ

視対象物は、背景との対比により見えますので、背景および周辺部の明るさ、配色、反射率が重要な要素となります。一般に背景が暗いほど視対象物は見やすくなると考えられますが、背景が暗すぎるとスポーツに重要な距離感覚が不足すると同時に、ボール等の速度が実際より早く感じてしまいます。このため、競技場背景は、表4.5に示すような配慮が必要になります。

表4.5 競技場背景

区分 反射率および考え方
屋内 天井 60%(60%が取れない場合は、天井を照明して補う)
20〜60%(球技は正面20%、側面はこれよりも高く、体操およびダンスは50〜60%)
20%
屋外 ・周囲に樹木を植える。
・背景のフェンスや観客席は、反射率の低い配色(20〜30%)とする。

(4)陰影・立体感

スポーツ競技では、ボールに適度な明暗をつけ、ボール等が立体的に見えるようにすることが重要ですが、その反面、競技者の前方に強い影を生じさせることは避けなければなりません。立体感を持たせるには、いくつかの方向から照明し、その光が競技空間で十分重なるようにする必要があります。一般的には、図4.1に示すような範囲であれば満足できるとされています。


図4.1 陰影・立体感

1≧Ev/EH≧0.5

Ev水平面照度
EH鉛直面照度

EvはEv〜Ev4のどれか一方向でよい

(5)グレア(まぶしさ)

グレアは、視対象物の見え方や競技への集中力を低下される原因となりますので、極力軽減することが重要です。しかし、スポーツでは、あらゆる位置からあらゆる方向を見るため、完全にグレアをなくすことは困難です。グレアとしては、減能グレアと不快グレアがあります。

5.1 減能グレア

減能グレアとは、競技者の視界に光源の高い輝度が直接目に入った場合、視対象物が見えなくなったりする等、競技者のスポーツ能力に悪影響を及ぼすものをいいます。

5.2 不快グレア

不快グレアとは、競技者等に不快感を与え、競技への集中力を減少させるようなものをいいます。
不快グレアは、次式に示すGRを計算することで予測することができます。GRと不快グレアの関係を表4.6に示します。

ここに

Lvl照明器具の直接光によって生じる光幕輝度(cd/m²)
Lve競技面の反射光によって生じる光幕輝度(cd/m²)

ここに

Evi番目の照明器具による観測方位を向いた眼の位置における鉛直面照度(ℓx)
θii番目の照明器具と眼とを結ぶ直線が観測方位となす角(度)
n照明器具の数

ここに

Eh競技面の平均照度(水平面照度)(ℓx)
ρ競技面の平均反射率
π円周率(3.14)

表4.6 GRと不快グレアの程度

GR 不快グレアの判定
90 耐えられない(unbearable)
70 邪魔になる(disturbing)
50 許容できる限界(just admissible)
30 あまり気にならない(noticeable)
10 気にならない(unnoticeable)

(参考文献:CIE No.112 Glare evaluation system for use within outdoor sports and area lighting)

不快グレア観測位置は、テニスコート、野球場、陸上競技場(サッカー場、ラグビー場)については、各々JISにより規定されています。グレアの軽減策としては、下記のようなことが考えられます。

5.3 グレアの軽減策
  • 照明器具の背景を明るくする。
  • 照明器具の輝度を低くする。
  • 競技中に比較的よく見る方向、または範囲に照明器具を設置しない。
  • 照明器具にルーバを取付ける(ただし、空間の明るさが不足しやすいので注意が必要)。
  • 照明器具の照射する向きをできるだけ下げるようにする。
  • 照明器具の設置高さを高くする。

グレアの生じる原因は、照明器具からの直接光ばかりでなく、光沢面での反射、昼間時の窓面等も考えられますので、それらの取扱いには十分な配慮が必要です。

(6)ストロボスコープ効果

卓球やテニスのボールのように動きの速いものは、商用周波数(50Hzまたは60Hz)で点灯された放電ランプで照明した場合に、断続的に動いているように見えることがあります。この現象は、ストロボスコープ効果と呼ばれ、放電ランプの間欠発光(1サイクルに2度)が主要因です。ストロボスコープ効果は、競技に支障を与えたり、写真やテレビジョンの画質を低下させることがあります。

6.1 ストロボスコープ効果の防止策

  • 放電灯3灯を三相交流の各相で位相をずらして点灯させる(最もよく用いられる方法である。この場合、照明光が空間で十分に交差していることがポイント)。
  • 放電灯に白熱灯を加え混光照明にする。
  • 放電灯2灯をフリッカレス安定器で、位相をずらして点灯させる。

(7)光色と演色性

光源の光色は、表4.7と表4.8に示すように、照度と関係して人間の心理に影響を及ぼすといわれています。

表4.7 光源の光色と見え方

光色の見え方 涼しい
(青みがかった白)
昼間 暖かい
(赤みがかった白)
相関色温度(K) 5300以上 3300〜5300 3300以下

(参考文献:JIS Z 9110 2010 財) 日本規格協会)

表4.8 照度・光色と心理的影響

照度(ℓx) 光色の見え方 備考
中間
500以下 快適 中性(3) (4)
  1. やや暑苦しいが、活気のある照明となる。
  2. 暑苦しく、不自然である。
  3. 使用上特別に問題ない。
  4. 冷たく、うす暗く不自然である。
500〜1000
1000〜2000 興奮(1) 快適 中性
2000〜3000
3000以上 過度(2) 興奮 快適

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