アイちゃんのあかりを訪ねて

古代オリエントランプの世界 - 白石市編 -

ギャラリー アル・スィラージュ


ギャラリー アル・スィラージュ外観

ギャラリー アル・スィラージュは宮城県白石市にある古代オリエントのランプを中心に展示しているミニ・ギャラリー。不動産管理会社社長である渡邉信男さんが、中近東方面で発掘に携わられたご友人の協力を得て昭和53年(1978)から収集されたランプコレクションをギャラリーとして、平成9年(1997)に自宅と棟続きの事務所の2階に開設されたの。

古代オリエントといえば、東はインダス川流域から西は東地中海地域まで、北は黒海沿海、西トルキスタンの草原地帯から、南はナイル川流域までの地域。また、ギリシア文明、エジプト文明、メソポタミア文明といった有名な文明の発祥の地だよ。アル・スィラージュで展示されているのは、紀元前9~7世紀ごろから紀元後13~15世紀ごろまでの東地中海地域(シリア、パレスチナ、イスラエル、イランなど)のオイルランプが中心なの!ギャラリーの名称アル・スィラージュは、アラビア語で“ランプ”または“あかり”のことを意味するそうだよ。

歴史をひも解くテラコッタランプ


ギャラリー内

ギャラリーに展示されているオイルランプのうち、最も数の多いのがテラコッタランプ!地中海周辺の古代遺跡から出土する数あるオイルランプのうち粘土を焼いて作られたランプで、量や多様な形と文様からも、最も基本的なランプ。オリーブ油などが灯油として使われていたんだって。テラコッタランプは遺跡の年代や地域的特性を決定する重要な手がかりになるだけではなく、描かれている文様や文字は、当時の人々の思想や社会を研究するための、さまざまなヒントを提供してくれるの。

ギャラリーでは、最初期のランプ形態である、ろくろ製皿型ランプから型押しランプの始まりにあたるヘレニズムランプ、その最盛であるローマンランプとビザンティンランプ、型押しランプの終焉としての初期イスラムランプ、それに引き続くロクロ製ランプというテラコッタランプの変遷が手に取れるように見て取れるよ。

ろくろ製皿型ランプ


ヘレニズムランプ


ろくろ製皿型ランプ

ろくろ製皿型ランプは、青銅器時代から鉄器時代にかけて見られるランプで、ろくろ製の皿に灯芯を安定させる火口をひねり出しただけのシンプルな作り。

ヘレニズムランプ

紀元前4世紀末からのヘレニズム時代に入ると型押しによるランプが主流になるんだよ。型押しランプは、石やテラコッタなどで作った型に粘土を押し込んでランプの上下を作り、それを貼り合わせて焼成したランプ。装飾がつけやすく大量生産が可能なのでローマ、ビザンティン時代を通じてオイルランプの主流となっていったの。

ローマンランプ


ローマンランプ

紀元前1世紀からのローマ帝国の興隆とともに、東地中海地域一帯に新しいタイプのオイルランプ=ローマンランプが広まっていったよ。油溜上面の天蓋が凹形をしていて小さな注油口があけられているのが最大の特徴で、ヘレニズムランプの幾何学文様から、ローマンランプでは、戦士や神像、動物、鳥、魚などの具体的な文様が登場したの。アラビアンナイトの中のお話「アラジンと魔法のランプ」に出てくる魔法のランプはローマンランプがモデルなのかなぁ~?


7連火口方形ランプ


青銅製 1


青銅製 2

ビザンティンランプ


シャンデリア用ランプ


ビザンティンランプ

十字架ランプ

ビザンティンランプは、紀元後4世紀末にローマ帝国が分裂し、7世紀半ばのアラブ人の征服までのビザンティン帝国(東ローマ帝国)の領域の一部となった東地中海一帯で作られたランプだよ。ローマンランプの伝統を受け継ぎながら形状も変化していったの。油溜の長胴化と芯道と油溜の一体化が進行し、注油口がまた大きくなったよ。文様も国教化したキリスト教のシンボルとして、十字架や銘文などが盛んに登場してくるよ。ここアル・スィラージュでは、このビザンティンランプの収集品が最も多いそうです。


円盤型ランプ


カラタゴランプ


ガラス製ランプ

13世紀から15世紀のイスラムランプ


初期イスラムランプ

イスラム時代になると初期のランプはビザンティンランプの影響を残した芯道と油溜が完全に一体化したアーモンド形の外形を持ったランプが中心で、その後は、ろくろでひいた天蓋を持ち、ループ状の把手が付けられたロクロ製のランプが増えていったよ。13世紀以降のイスラムランプは陶器や金属製のランプが多く形状も古代オリエントランプの中ではかなり異質のランプといった印象でした。

写真からも分かるけど、美しい釉薬で彩色され銀化したランプが出土することもあるの。これはイスラム陶器によく見られる現象で陶器の表面を被っている釉はもともとガラス質のもので長い年月、土の中にあると表面のガラスは土中に含まれている炭酸ガスとアンモニアの湿気で浸蝕作用を受けるの。その際、ガラスにアルカリ分が多いと可溶性珪酸塩ができて流れ出しガラスの表面に凹凸ができ、五彩を放つ真珠色の鱗片状を呈しはげるようになり、陶器に被われたガラス釉が銀化現象を起こすそうだよ。


把手付きランプ 1


把手付きランプ 2


把手付きランプ 3

アイの知って得する豆知識

ひでばち


ひでばち

ひでばち(火出鉢)は、松の木の根や、幹の脂の多い部分を細かく裂いたもの=ヒデを燃やす灯火具。“ヒデ”は関東地方の方言で、京都付近では“ジンド”、岐阜県では“ロウ松”、浜松付近では“べた松”と言うそうです。松の木を切った後の根株を3年から5年放っておくと、ヤニの無い部分が腐って土になり、脂分の残りを丹念に掘り出して小さく裂いて使ったそう。鉢は、不要になった石の挽き臼や、砂岩や玄武岩などの自然石を彫りくぼめ加工したものを利用したの。菜種油などは貴重品だったから松根油を使用することで室内照明として使われていたんだって。

中国と韓国の灯火具


韓国の灯火具


人形型灯火具

人形型灯火具は中国のもの。人形が持っている丸い容器に油を注ぎ、中央の所に芯を立て火を灯すの。夜、暗い部屋で眺めたらちょっと怖いかも(笑)。韓国のものは日本のひょうそくに似た感じ、さかずき状の器に油を注ぎ、油に灯芯を浸して火を灯すの。

★アイちゃんイチオシBOOK「ローマンランプの世界 ともしび」★

ギャラリー アル・スィラージュのコレクションの図録「ローマンランプの世界 ともしび」は、テラコッタランプの歴史がひとめでわかる価値ある一冊。

古代オリエントランプの不思議な世界へ引き込まれちゃうよ。
ご希望の方は、ギャラリー アル・スィラージュに連絡してね!1部800円(郵送料別)で購入できるよ。

ギャラリー アル・スィラージュ

所在地
宮城県白石市東町2-8-36 寿丸合名会社内2F
電話
0224-26-2040
URL
http://orient-lamp.net/
開館時間
午前10時 ~ 午後4時
休館日
土・日曜日・祝休日

取材協力:ギャラリー アル・スィラージュ 渡邉館長